リュックとトートバック一杯に本を詰め込み、遅番で出勤。中身はと言えば、読みたくて店から借り出していたもの、同じく日々録のネタにと思いながら果たせずそのままになっていたもの、そしてここ数ヶ月の間にちょこちょことセドリしたもの。ともかく「自宅にある、私物でない売れる本は全部持ってっちゃうぞ!」と一念発起した次第。狸坂を自転車で下る際の加速のされ方がいつもとは段違いで、スリル満点でした。
今日は久しぶりにスタッフ4人全員が顔を揃えるシフトで、ブックオフが開店してからは初めてのことでもあり、あれこれ話し合ったりすることとなりました。ことがことなので長引いてしまい、品出し作業に取りかかれたのは19時を回ってから。家から持ってきた本をパッと出して、そのあとにも1箱開ける予定だったのですが、結局そこまでは行けず終い。
新曜社『戦争が遺したもの』鶴見俊輔、上野千鶴子、小熊英二 1995円 初帯
冬弓社『ためらいの倫理学』内田樹 1365円 初帯
フリースタイル『教養主義!』 1155円 初帯
この3冊が日々録で取り上げようとして果たせなかったもの。改めて僕が言うまでもないことですが、どれもよい本です。
『教養主義!』は、12のジャンルについて12人が推薦する本を紹介するといった体裁の本。12人のラインナップは、山田宏一、村上知彦、中条省平、石上三登志、金井美恵子、萩原健太、高橋源一郎、飯沢耕太郎、和田誠、井家上隆幸、鷲田清一、片岡義男。あと装幀は平野甲賀、装画は湯村輝彦。詳しくはこちらで。版元のフリースタイルについては、季刊「本とコンピュータ」2003年冬号の特集「出版社のつくり方」で大きく取り上げられています。並べて品出ししたので、よかったら手に取ってみてください。
他には下記のものなどを出しました。
文化出版局『僕の東京地図』安岡章太郎 1050円 初函帯
旺文社文庫『こぶ・ゆるね』安藤鶴夫 1050円 初
中公文庫『書架記』吉田健一 1050円 初
中公文庫『素顔のモーツァルト』石井宏 1050円 初
中公文庫『ワーグナーの妻コジマ』ジョージ・R・マレック 840円 初B
中公文庫『回疆探検 ペルシャの旅』吉田正春 840円 初帯
角川文庫『麻雀ブルース』田村光昭 630円 初
講談社文芸文庫『白日夢』渡辺一夫 1050円 B
集英社文庫『実験小説名作選』筒井康隆 選 630円 初
集英社『風の、徒労の使者』丸山健二 1050円
『僕の東京地図』は今日出した本のなかで一番好きな装幀。昨年亡くなられた田村義也さんの仕事。
田村光昭さんのことは沢木耕太郎の対談集『贅沢だけど貧乏』で初めて知りましたが、すごい人です。これは小説。
『実験小説名作選』は筒井康隆のセレクションが面白いです。牧野信一、藤枝静男から中村誠一まで。
<今日店でかけたCD>
品出し作業に入ってからはソウル・ミュージックばかりかけました。
O・V・ライト、オーティス・クレイ、そしてオーティス・レディング。
(宮地)
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僕が遅番で出勤してからは1件の買取りもなく、ちょっと寂しい一日でしたが、その分品出しは捗りました。文庫新入荷棚をかなり入れ替えました。
目玉は、稲垣足穂の河出文庫4冊。
『ヒコーキ野郎たち』『天体嗜好症』 各840円 初
『東京遁走曲』『南方熊楠児談義』 各1050円 初帯
あと、赤江瀑の文庫本8冊(下記のものに加え状態一息の2冊もあり)。
『野ざらし百鬼行』『八雲が殺した』『青帝の鉾』 各525円 初
『アニマルの謝肉祭』『巨門星』 各630円 以上文春
『海贄考』(徳間)『ポセイドン変幻』(集英社)『花曝れ首』(講談社)各525円 初
他にもこんなものなど。
新潮文庫『天使が通る』浅田彰、島田雅彦 525円 初帯B
角川文庫『モダン・ジャズ鑑賞』相倉久人 630円 初帯B
講談社文庫『夏の流れ・正午なり』丸山健二 525円 B
ちくま文庫『都市の感受性』川本三郎 630円 B
ちくま学芸文庫『ラバーソウルの弾みかた』佐藤良明 1050円 初帯
<今日店でかけたCD>
水族館劇場『大いなる幻影』サウンドトラック
今月の初め頃、店のCDプレイヤーを買い替えたのですが、そのおかげで、これまで相性が悪く聴くことが出来ないでいたものの多くが復活しました。これもその1枚。うれしい。
(宮地)
内澤旬子さんの『旅先でも本』は、いい動きしてます。日々録を読んでくださっている沖縄の方から注文あり、本日発送。
その他すでに入荷済みの新刊雑誌をまとめてご紹介。
『谷根千』78号、特集はステンドグラス。
『彷書月刊』2004年12月号、特集は容(いるる)。生誕百年正岡容。この方のお墓は、谷中玉林寺にあるのだそうだ。
『BOOKISH』2004年11月号、特集は画家のポルトレ。
古本で出した中からは、一冊。
沖積社 『本と装幀』 田中薫 1680円
このところなんとなく落着かない気分の原因のひとつが、保険の更新。不得意分野ゆえ余計に気が重い。
別に外交員さんと喧嘩したいわけでもないのに、些細な引っかかりが、更なる引っかかりを生み、今日は遂に担当外交員の親分まで出てくる始末。元はと言えば、担当が何かにつけ、恭しく、これは「コンピューター」が計算して出した数字だからね、を連発したせいだ。今どき「コンピューター」なんて云われて、誰がハハーッて平伏すんだよ。そうやって、おばあさんたちに判子つかせてきたんだろう、と私ん中の猜疑心がムックリと目を覚ましてしまったのだ。
最低額の保険料のくせして何度も試算表を出させ足を運ばせ、きっと千駄木の安物女とか言われてるんだろうと思うと憂鬱だけど、納得できないものはしょうがない。元々は世の中も私もバブリーだった頃に入った保険だから、今より利回りがいいらしいのだが(この辺も付け焼き刃で勉強した)、そのあたりを質問しようものなら、今回の医療保険は前のより保障が手厚いだとか、訊いてないことを応えてくるのは親分も同じことで、ますます深みにハマっていくのだ。
お陰で普通の人が知ってる程度のことが、ようやっと解るようになったけど。
どこかに、保険駆込み寺ってないのかなぁ。なんにも執着しない人間に、なりたあいなぁ。
(ミカコ)
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遅番で出勤。日曜日からこちら買取りが続きほとんど品出しが出来なかったのですが、それも昨日で一段落、下記のものほかあれこれ出しました。質量ともに満足できる買取りがあったこと自体は、開店したブックオフへの本の流出を心配していたこともありうれしくほっとしたのですが、ゆえに「出したいものがこんなにあるのに出せない」というストレスも溜まりつつあったので、精神衛生上も大変よい一日となりました。
講談社文庫『夢声自伝』徳川夢声 全3巻 3150円 初
人文書院『遍路と巡礼の社会学』佐藤久光 1890円 初帯
筑摩書房『忠誠と反逆』丸山眞男 2520円 初帯
青土社『日本フリージャズ史』副島輝人 1890円 B初帯
『日本フリージャズ史』は前から読みたかった本で、これまでならすぐには出さずキープしたであろうものですが、ブックオフの開店で、特にマンガの売り上げが減ることが確実な状況でもあり(というか、すでに減りはじめているのですが)、私欲を捨ててすぐ出しました。まあ、読むだけなら図書館で借りればよいわけですしね。ちょっとだけ目を通しましたが、相当面白そうな本です。
さて、そのブックオフの影響ですが、今のところもっとも目に見えてわかりやすいものとしては、マンガの立ち読み客の減少が挙げられます。いつも棚の前にあれほどたくさんいた小中高校生の姿が見事に消えました。彼ら彼女らにとって僕たちの店が「ただでマンガの読める店」でしかないことはもちろん知ってはいましたが、毎日顔を合わせていると当然親しみのようなものも湧いてくるわけで、こうなってみると少し寂しいです。
それ以外のお客さんからは、誰かしらに励ましの言葉をかけていただく毎日です。「私も頑張って買うから負けないでね」と応援してくださる方から、「あんたたちもこれまでよく頑張ったよ」というもう終戦間近といった認識の方までさまざま。個人的には「どうですか」と訊かれれば「影響がないということはまったくないです」と答えていて、まあ実際そんな感じです。いずれにしてももう少し時間が経たないと何もわかんないですけど。
(宮地)
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『クウネル』の最新号で本作りの指南をしている内澤旬子さんの『旅先でも本』が入荷しました。
一冊一冊手製の仮綴じ版で、787円(税込)です。
バックパッカーのひつじさん(内澤さん)が本読みながら旅してるイラストの表紙を開けると、そこはいきなりエチオピア。旅の始まりです。
羊表紙に描かれたアフロヘア
イラストルポライター極小出版をはじめる
羊表紙を巡る旅は続く
中身から本を作ろう
プラハで見つけた小さな本
苦しくてやがて楽しい本づくり
見出しを並べてみると、えぇ、そうなんです。
CDよりもほんのひとまわり大きい、両手に収まるほどのこの本の中身は、かなり濃いです。深入りしちゃってます。
専門的な言葉もふつうに出てきますが、そこはイラストルポライター内澤さんの本領発揮、解りづらい本のディティールや、作業工程などがよく解り、思わず小躍りしてしまいます。
ほうろうでも、内澤旬子さんのワークショップを計画中です。ワクワクします。
(ミカコ)
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向島歩きの日。(今日は、長ーいですよー。)
昼過ぎ、日暮里から「里22」亀戸行きのバスに乗って、先ずは終点亀戸駅前まで。この路線は東日暮里からぐいんと北上し、宮地の交差点で明治通りに入る。三ノ輪を通り、隅田川は白髭橋を渡り、所要時間およそ40分。あとで歩く辺りを斜めに突っ切ることになる。
亀戸では腹ごしらえ。亀戸餃子。千駄木に引越してきてから初めてなので、何年ぶりになるんだろう。ここのメニュー、飲み物以外は、一皿250円の焼き餃子だけ。白飯もなし。潔いのだ。決まり事は、一人二皿以上ということなので、席につくと何も言わなくても、順に二皿出てくる。終わりそうな頃におばちゃんが「次どうする?」と訊いてくれるので、頼んでも頼まなくてもいい。時々ビールで口の中を冷やしては、焼きたてのアツアツをはふはふし、「うっめー」「おいしー」を連発。亀戸餃子は、サクッと軽い餃子なので、いくらでも食べられるのだ。結局、一人三皿ずつ、最後にもう一皿追加して、七皿平らげた。「一気に食べちゃったわねー。」と、おばちゃん。
亀戸から東武亀戸線で三駅目の小村井へ。宮地の解説によると、昔はこちらが東武の本線で、曳舟を経由して日光の方まで行っていたのだけど、結局利便性のよい浅草の方が本線になり、今は亀戸と曳舟の間を行ったり来たりしているのだそうだ。二両編成で、路面電車のような可愛らしい電車だった。
小村井からは、北北西に位置する今日の集合場所、東向島の地蔵坂商店街を目指しつつ、気ままに歩く。小村井の駅を出たところに、寿司屋の暖簾。65円の張り紙が気になって正面にまわると、あ、中里さんの写真集に出ていたショウケース。握り寿司の食品見本と一緒に、なぜか30センチほどありそうな木彫りのへら鮒が鎮座ましましている。
あっちに寄り、こっちに寄りしながら、出たのはキラキラ橘商店街。この前は、夜遅くて店は全部しまってたけど、今日は賑やか。いきなり、宮地がじじシャツを購入。エンジンがかかってきた。褞袍にも迷い始めるが、谷中ぎんざと比べてから。ここはお惣菜屋さんがとても多い。おまけに安い。お腹いっぱいなので、コロッケひとつも買えないけども。と思ったら、この前気になったコッペパンのお店。サインがたくさん飾ってあったから、たぶん有名な店なんだろう。ジャムか、ピーナツ入り150円、なし100円。一度通り過ぎたが、戻ってピーナツ一個。おじさんは愛想がなかった。
この街は、四つ角でも十字の線が引けるように交差してないことがあるので、見る方向によってまったく違うような景色に見えるのだ。とても不思議な感覚。そうかと思うと、初めて通るのに、ここさっき来たよね、ということもある。迷路。
歩いているうちに、陽が落ちてきて段々空が染まり始めた。建物が低いから、空が広い。話をしながらも、あまりにも夕焼けがきれいで、西に吸い寄せられるように路地をすすみ、角を曲がった。視界の先に、家並の遥か上まである大きな樹が見えた。あの樹まで、そう思って、耳では宮地の話を聞きながら夢中で歩いた。両側に家が並ぶ道を樹を見上げながら突き進むと、急に視界が開けた。ざわわと葉を繁らした大樹はたぶん楠、その下一面にコスモスのお花畑。チャンバラをする子どもたち。その向こうには線路。背景は真っ赤な夕焼け空。「うわーっ、天国みたい。」思わずふたりして声を上げてしまった。看板を見ると「お花畑と芝生の広場 ピクニックにいかがですか」と書かれている。どなたかが丹誠込めて手入れしている広場なのだった。ベンチに腰掛けてしばらくの間、行交う電車と、移ろう夕焼けと、走り回る子どもたちを眺めていた。
6時の集合時間が気になってきたので、また歩き始め、大きな京成曳舟駅を越して目的地を目指す。
5時過ぎ「橙屋」到着。「橙屋」は、棟割り長屋の一軒で10年くらい前に閉店した元床屋さんの内装をそのまま使った、今回の中里さんの写真展をしている会場の名前。向島にはなぜか夏みかんの木が多く、去年地物の夏みかんでジャムなどを作ったから、その延長でのネーミング。内装は変えていないのだけど、一階の店舗部分には中里さんの小屋が配置され、夜は床屋さんの椅子に座りながら「橙ドリンク」が飲める、バーにも化すという不思議な空間。小屋の設置や展示の準備をした「橙屋」看板娘の茎子ちゃんと話していたら、なんと「青空洋品店」の内装も手掛けたというので驚いた。
写真展は二階の元住居部分。階段を上がったとこの二畳ほどの部屋は暗くして、ビデオを映し、通りよりの畳を剥がした六畳間で壁一面に中里和人さんの写真、続く通りに面した一畳ほどの隠りたくなるような部屋が「(中野)純の間」、反対側の物干に続く部屋には、亡くなった床屋のご主人が描きためていた油絵や、スケッチブックが展示されていた。
六日月が南西の空にくっきりと浮かんでいる6時半、いよいよ中野純さん主催の「向島・ムーンセットウォーク」。総勢30名ほど。隅田川が大きく曲がる鐘淵の川岸から月の入りを観るため、道々、写真集に出てくるシーンなどを案内してもらいながら、20時時59分の月の入りを目指して夜の街を歩くという企画。とはいうものの、夜の住宅地、年代もばらばらな30人の男女がぞろぞろ歩くのはかなり変。それだけいれば泥棒にこそ間違えられないだろうけど。まだまだ荒らされていないところなので、悪い印象を置いてくるわけにいかない。気を使う。
私たちは午後からずっと歩き続けているので、魅力的な町並や建物も、一日にこれだけ観るとさすがにお腹いっぱいな感じ。楽しいけど、ちょっと疲れた。
鐘淵に着くと、残念ながら空の下の方に霞がかかってしまい、月の入りは拝めず。しばらくそこで過ごしたあと、堀切駅へ出て解散。
私たちは北千住へ出て、行き当たりばったりで「千両」という飲み屋へ。名物「鮪の中落ち」、「葱トロ」ともに350円、ビール大瓶450円。ここは、当たり。長歩きで乾いた喉にビールがぐびぐび吸われてく。三十年値段を変えてないという名物二鉢も、思わずお替わりするほど美味しかったし、秋刀魚昆布〆も蛸の唐揚げも旨かった。冷えた身体に最後は熱燗がきいて、種々の悩みごとは消えないけど、ま、ほんのり酔っぱらって、長ーい一日無事終了。
(ミカコ)
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定休日。いつものように、4人で2時間ほどいろいろ打ち合わせ。
夕方、これから使うこともあると思うので、一応ご挨拶しに4人でブックオフへ。うちでは売れづらいけれど、ブックオフでは売れるかもと思われる作家の文庫なども2袋ほど買取ってもらった。
店に戻ってきたら、うちの店がとても古本屋らしく見えた。
定休日にウインドウの入れ替えをすることにしていて、忘れていたが今回は私の順番だった。
たまたま2、3日前に、宮田雅之の切り絵が表紙に使われている角川文庫の江戸川乱歩を20冊ほど在庫から発掘しており、そのうち数冊は状態が悪く100円で出してしまうものだったので、その前に飾ってお披露目しておきたいね、と宮地と話していた。早速それらを並べてみる。状態がよい方は全て630円。
下記2冊も飾った。
講談社『宮田雅之きりえ画集』 初版、函 3150円('72年)
平凡社『別冊太陽 日中国交正常化30周年記念号 宮田雅之の切り絵「史記・水滸伝・唐代伝奇・三国志」』 1680円
宮田雅之は、37歳で谷崎潤一郎に見いだされ、谷崎作品の挿絵を担当。山田風太郎の『八犬伝』なども手掛けています。
刃が描く、鋭い線と、女体の艶かしい線。冬に向かうというのに、更に足下から寒くなるような、妖気がたまりません。
(ミカコ)
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中番で出勤後、閉店までというシフト。平日2人出勤の時のパターンなのですが、今月は休暇をもらった分これが多くなってます。じっくりと仕事をするには良いのですが、ダレちゃう時もあってこれがなかなか難しい。会う人会う人と「寒いですね〜」と挨拶を交わした一日でした。
仕事の方は、急に思い立って3年ほど前買い取ったきりになっていた箱を開けてみたのですが、これが大当たり。まず新書判の獅子文六が眼に入り、次に古い角川文庫がぞろぞろと出てきました。他にも、うちの店ではあまり見かけない「黒っぽい本」が詰まった不思議な箱でした。しかし、なぜこんなにも長い間寝かしていたのかは謎です。当時すでに獅子文六の再評価は始まっていたはずなのに。まあそれはともかく、下記のもの以外にもあれこれ面白いものを出したので、お近くの方は覗いてみてください。
新潮社『父の乳』獅子文六 1050円 初B
角川文庫『南の風』獅子文六 840円 帯BC
角川文庫『おばあさん』獅子文六 1050円 帯
角川小説新書『嵐といふらむ』獅子文六 1575円 B
角川小説新書『女坂』圓地文子 1050円 B
角川文庫『女家族 他一篇』林芙美子 1050円 初帯B
角川文庫『茶色の眼』林芙美子 630円 帯BC
角川文庫『普賢 他四篇』石川淳 840円 初帯B
角川文庫『モンテーニュ随想録抄』 630円 帯B
第三文明社『随筆三国志』花田清輝 1050円 B(レグルス新書)
角川文庫および角川小説新書に関しては、だいたい昭和30年前後に出たものです。この頃の角川文庫は、味のある字体とデザインによる帯で、パッと見からして惹かれてしまうのですが、内容も充実していて、巻末の目録など眺めているとちょっとたまらない気持ちになってきます。例えば日本文学の目録はこんな感じ。久保田万太郎だったら『戯曲集』『市井人・うしろかげ』『浅草風土記』『浅草ばなし』、水上瀧太郎なら『大阪』『大阪の宿』『倫敦の宿』、獅子文六も上記のもの以外に『胡椒息子』『沙羅乙女』『信子』『東京温泉 他一篇』と盛りだくさん。もちろん今だって図書館で全集を借りれば簡単に読めるのですが、小さくかわいい文庫本が手元にあれば、やはり喜びは大きいですから。
(宮地)
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昨日の中途仕事を終わらせた。
マガジンハウス『東京旅行記』嵐山光三郎 B 840円
雪華社版『戦後風俗史』ろうそくからテレビへ 廃墟から生活革命へ
戸川猪佐武 S.35 初版 BC 函ヤケ、背傷、一箇所書込 1575円
農文協『やっちゃ場伝』競り人伊勢長日誌
神田川菜翁 1155円
などを新入荷棚に加えました。
2時頃、出張依頼のお電話。2箱ほどだということだが、先方にも当方にも車がないので、先ずは宮地が見積もりに伺うことになった。以前東京新聞にうちのことが載った記事を、切り抜いて取って置いてくださったそうだ。
なんだか、嬉しくなります。
夕方、今夜は久しぶりに「鳥よし」に行こう、と決めた。それからは、それを生き甲斐に働いた。ふだんは割と安定している宮地が、不気味なほどハイテンションになり、歌いながら、踊りながら、働きまくっていた。
なのに無事仕事を終え、鳥よしの前まで行くと、なんと灯りが消えてる・・・。あぁ、今夜の拠り所だったのに。あの異様に盛上がってた宮地を見てた分、余 計に絶望的な気分になってきた。うなだれていると、暗闇から手招きしてくれているのは、鳥よしのお母さん。おぉ、私たちはまだ神に見捨てられていなかっ た。ありがとございます。救われた。
ビールが、ビールが、心に滲みた夜でした。。
(ミカコ)
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早番。
浦沢直樹の『MONSTER』や、冬目影の文庫版『黒鉄』、原哲夫の文庫版『北斗の拳』、他は新谷かおる、司馬遼太郎の文庫『翔ぶが如く』などセットものをビニール梱包。値付け済み棚空き待ちの文庫を気まぐれに数冊だけ棚に差したり、あとは何をしたかな。今日の品出しは、完成されたものがないな。先月末頃から、嬉しいことに結構お客さんが多くレジでのやり取りが多いのだ。
夜は宮地と東向島へ。中里和人さんの写真集『長屋迷路』の出版記念イベント。
はじめて降りた東向島の駅。目指すは「現代美術製作所」、案内には徒歩3分とある。地図を片手に線路に沿った路を進む。この辺なんだけどな、と立ち止る宮地。時間が迫っていたので、目の前の八百屋さんに尋ねると、元気なご夫婦が笑顔で交互に応えてくれた。お礼を言って歩き始めた私たちに「ほら、みんな歩いてくから、付いてけば大丈夫だよ。」と、ご主人の声が追いかけてきた。あぁ、ここはいい街だ。別に緊張してたわけでもないけれど、その八百屋さんで私たちは一気にほぐれた。初めて訪れる場所は、相性の良し悪しを感じることがある。その場所がいいとか悪いとかではなく、単に自分との相性だ。だから、ここは大丈夫。身を委ねられる、そう感じた。
この4年間、中里さんは戦前からの家並が残る向島に通い、歩き、迷い、魅せられ、シャッターを切った。それが今回完成した中野純さんとの共著『長屋迷路』という作品。ノスタルジーではない。夢の中で見た景色にちかく、引き寄せられるように路地に入り込むと、また別の路地に吸い込まれる。角を曲がるたびに驚きがあり、そんなことを繰り返すうちにすっかり道に迷っている。しかし迷うことに焦りや不快を感じないのが、この街の不思議な魅力だと思った、と語っておられた。それが私にはさっきの八百屋さんで感じた、街に包まれたような気持ちと通じるような気がした。
イベントは向島百花園200周年記念の企画ともリンクしていて、向島の家々になる橙を子どもたちがもらってきて、ジャムにしたりジュースにする中里さん企画のワークショップのビデオ上映に始まり、『長屋迷路』の新作ビデオ上映、中野純さんとのスライドトークショー、「向島で迷う」と題した座談会、と盛りだくさんで楽しい時間だった。
そう、中野さんの印象的な解説があって、なぜ向島に来ると人は迷うか、という分析なのだけど、もともと複雑に路地が入り組んでいるところに、区画整理がないまま三角州のような土地に明治通りと水戸街道が斜めに突っ切り、しかもその両道路をはさんで路地と路地が繋がっていないという現状が、迷う事態を招いているのだという。地図を広げてみると、うーん、納得。
帰りは、じゃあちょっくら歩いてみるか、という気分になって、京成曳舟に出た。終電が差し迫っていたので、身を委ね過ぎてあんまり迷子にならないように気をつけながら。写真集に出てきた風景が不意に目の前に現れたり、柳がしなだれる長屋があったり、太くなったり細くなったりしながらくねくねと曲がる道が、谷根千界隈とも違う雰囲気で、なんとも視覚的に新鮮だった。
17日(水)は、地蔵坂通商店街の元理髪店「橙屋」で写真展と、ビデオ上映があります。夜は、中野純さんの『月で遊ぶ』の出版を記念して「向島・ムーンセットウォーク」なるイベントもあります。(こちらは要予約、参加費500円)詳しくは、HPの案内をご覧ください。
(ミカコ)
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早番で出勤。すぐそばでもうすぐ開店するブックオフが今日から買取り開始。昨日まではなかった看板がちゃんと付いていて(うちの店から見える)、それこそ店の名前よりでっかく「本をお売り下さい」と書いてあり、うちの店の「古本」の看板(これも実は結構でかい)も、この際「本買います」に変えようか、などと考えてみたり。格好悪いのであまり気に入っていないこの看板ですが(この場所がスーパーだった時代からあり、大家さんが好意で「古本」に変えてくださったもの)、この際、毒食らわば皿まで?といった感じで、なんて。もちろん本気じゃないですけど、競合店の出現にあれこれ考える日々。
今日は質より量といった傾向の品出しを黙々とこなしました。午前中は、買ったばかりの『街道をゆく』全43巻をバラで。1冊315円から525円。まとめて入ってきたのは初めてだったのでセットにしちゃおうかとも思ったのですが、1冊300円の計算でも1万円を超えてしまい、それではなかなか売れないと判断して。これだけの巻数だと、セロハンで包む手間を考えると、とりあえずセットというのもしづらいし、かといって均一棚に入れちゃうと実質1冊210円で、それはちょっと惜しいかな、などとしばし悶々としました。結局、時代小説棚の新撰組特集コーナーを縮小することでスペースを確保、バラ出しと相成りました。
稲毛屋さんで昼食。鳥照り焼き丼はいつもながらおいしい。稲毛屋さんのミニコミ「ちびとらニュース」に、先日放送された「アド街ック天国」のことが出ていたので、ちょっと引用します。
「祖母が志ん生、馬生と仲がよく(それ以上に奥さんと仲がよかったそうです)いききしていたそうです。志ん生の好物として、鰻でなく親子丼(生玉子の、のった)が放映されました。ちなみに志ん朝と母は同級生です。」
午後はひと月ほど前に買った鉄道雑誌の品出し。ほとんど「鉄道ファン」で、おもに1983年から89年までのものを70冊ほど。自分でも毎月買っていた時期のものが多く、懐かしさにかられついつい読み込むことに。当時は気に留めなかった軽便鉄道についての連載など、非常に読み応えがあり(写真も多い)堪能しました。鉄道に距離を置く時期がしばらくあったので、こういった連載が1冊の本になっているのかどうかは知らないのですが、もしなっていないとしたら、これらのバックナンバーは貴重な資料ですね。ただこの雑誌、非常に重くかさばるので、普通の人が常に読める状態で保管するのは難しいようで、そういう方々がうちにも売りにきてくださります。さて値段ですが、全体的にあまり状態がよろしくないため安めです。315円中心で高くても525円。切り抜きなどがあるものは外出し105円です(他の雑誌だったら切り抜きありは処分なのですが、車両の設計図やダイヤグラムなどの付録を含め、捨て去るのは忍びないので)。
夜はミカコと渋谷パルコで開催中の「新世紀書店」へ。このイベント、西荻窪ハートランドの斉木さんが関わっていて、その流れで小森くんを通じて(「ポエトリーカレンダートウキョウ」つながり)僕たち4人も「顔写真と出身地と好きな食べ物で本を選ぶコーナー」へ参加しました。残念ながら本が見つからなかったということで、僕と神原については没になってしまったのですが、ミカコと山崎はしっかり登場していました(本自体は売れちゃってました)。せっかくだからと、光り物系の魚が好物という茨城県出身の女性が薦める文庫本を購入。帰りの電車のなかでドキドキしながら包みを開けると、なんと松浦理英子の『ナチュナル・ウーマン』でした。う〜ん。親指ペニスで彼女がブレイクした頃、トレヴィル版初版の『ナチュラル・ウーマン』を友人に見せて自慢したという、あんまり自慢できない過去を思い出しました。好きな作家であることは間違いないので、そういう意味では正しい選択だったのですが、未知の本との出会いという期待はかなわず、残念でした。嗜好のまったく違う人のものを選んだ方がよかったのかもしれません。
この顔写真コーナー以外にも、いろいろなブースがあるのですが、どうも口では(というか文章では)うまく説明できそうもないので、しません。17日の水曜日まで開催しているので、興味なある方は直接足を運んでみてください。僕が他に買ったのは、最近出たオヨヨ書林さんの目録第3号「旅行本特集」100円。大正9年鉄道院発行の『温泉案内』1575円(印151mm 468P)というのに興味を惹かれましたが、まだあるのかなあ(オヨヨさんもこのイベントに関わっていて、さきほどの顔写真コーナーの本を集めることなどを担当されたよう)。
(宮地)
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ミカコと僕は昨日まで湯治に行っていました。草津4泊、沢渡1泊の6日間。起床風呂朝食、読書風呂昼食、午睡読書散歩、風呂夕食読書、風呂ビール就寝、といった充実した数日間を過ごし、リフレッシュして帰ってきました。気力充実。バンバン品出しして、日記もガンガン書いちゃうぞ、といった心持ちであります。休暇中のことについてはあれこれ書きたいことがあるのですが、今日のところは品出し情報優先、宿のことや読んだ本のことは、明日以降ボチボチと書いていければと思っております。
まずは昨日の帰り途、高崎で途中下車して古本屋を何軒か回って仕入れたものから。
中公文庫『随筆 蝸牛』川瀬一馬 1575円 初
中公文庫『モンマルトルの空の月』中川一政 840円
中公文庫『どんたく』竹久夢二 840円 初帯
中央公論社『どうなとなれ』富士正晴 840円 初帯(蔵書印ありB)
講談社文庫『塔』福永武彦 840円 初
日本交通公社『時刻表名探偵』石野哲 840円 B
駸々堂ユニコンカラー双書『鉄道の旅 北欧』中田安治 630円 初
個人的にこのなかから1冊だけ挙げるとしたら『時刻表名探偵』。唯一リアルタイムで読んだものです。大きな影響を受けたという点では宮脇俊三さんにはかないませんが、多くを教えられたという点ではこの本も負けてはいません。奥付を見ると昭和54年3月10日初版の3月30日第5刷。随分売れたのですね、この本。今更ながらにうれしいです。著者は当時、国鉄全線完乗者にして、時刻表編集部勤務という、鉄道好きの子どもにとっては憧れずにはいられない肩書きの方だったのですが、「名探偵の」との名前に違わず、飛びついた僕をますます時刻表にどっぷりと浸からせてくれたのでした。今読み返すと、本文の方のマニアックな蘊蓄もたまりませんが、50頁以上にも及ぶ巻末の索引と付録に圧倒されます。なかでも「ある漢字のつく駅が日本全国にいくつあるか、あるいはひとつもないか」という(ある意味どうでもいい)ことが一発でわかる「駅名字一覧」表は圧巻。また、見返しの「ひと目でわかる電化と複線区間」の表も見事(この表は後に時刻表本誌にも付録として付けられました)。いずれにしても、東北上越新幹線の開通と赤字線廃線ラッシュ以前の、国鉄および時刻表にとっての最後の幸福な時期を背景とした、郷愁にむせばずにはいられない名著です。石野さんは今どうしてらっしゃるのでしょう。
今日は他にも結構出しました。実は旅立つ前の日、休暇中に新入荷棚がスカスカにならないようにと、段ボール1箱分のストックを用意しておいたのですが、どうも思ったほど売れなかったようで、結構残っちゃったのです。それらを全部出しました。以下はその一部。
南雲堂『アメリカ文学史』亀井俊介 全3冊 3780円
みすず書房『西欧精神医学背景史』中井久夫 1575円 初帯
ちくま学芸文庫『カストラートの歴史』パトリック・バルビエ 1260円 初
インパクト出版会『音の力 ストリートをとりもどせ』 1680円 初
情報センター出版局『チベット・クエスト』松本栄一 1260円 初帯
あと、休暇中の買取りからも少々出しました。下記のものなど。
集英社『深夜の独笑』石和鷹 1050円 初帯
では、また明日。
(宮地)
急なお知らせになってしまいますが、明日の深夜、渋谷で“PARTY for UNITY!!”というイベントがあります。
『キッズ(だけにじゃもったいない)ブックス』の著者陣のおひとりである佐藤由美子さんが、完成した第2弾の見本を携え、先日店に来てくださった。題して『英語ペラペラキッズ(だけにじゃもったいない)ブックス』は、定番ものや、勉強に役立つ本を集めたものらしい。
で、佐藤さんのダンナさんが、のじれん(渋谷・野宿者の生活と居住権をかちとる自由連合)のTシャツなどのデザインをしてらして、“PARTY for UNITY!!”のイベントもお手伝いしておられるとのこと。
付き合い下手、群嫌い、誇り高き少数派たち、パーティー苦手同士とりあえず酒酌み交わして、ゆるやかな繋がりを持とうじゃないか、という集まり。興味があって、深夜に強い方、お出掛けください。(ミカコ)
PARTY for UNITY!!
世界のほんの一握りの資本家や権力者が、自分たちの利益のために戦争を起こし、環境を汚染し、難民を生み出し、貧困者を苦しめる。ヤツラは少しぐらいの考え方の違いがあったとしても「金」という価値観で固く結びついている。オレたちはどうだ?反戦団体はデモをやり環境保護団体は声明を出し難民問題の団体は署名を集め貧困者の支援団体はシュプレヒコールを上げる。しかし、お互いのことはよく知らない。みんな自分たちのことでいっぱいいっぱいだ。パーティーをやろう! 誰もが抱える問題は一つにつながっているんだ。みんなで集まろう。酒を酌み交わそう。議論をすれば考え方の違いがあるのはあたりまえのことだ。みんなでゆる〜くつながろう。何かを生み出そうなんて大袈裟なことを考えなくてもいい。まずは顔を合わせて知り合うだけでいいんじゃないか? 何となく幻想のように思っていた「もうひとつの世界」をリアルに感じたいだけだ。 さぁ、パーティーをやろう!!
2004.11.13 sat 23:30 Start(end 29:00) @gabowl
■DJ? ■LIVE? ■団体・個人アピール?
●以下のこと以外は全て未定
●入場無料(但しドリンク・フードは別料金)
●貧困者のための無料焼酎サービスあり
■会場は cafe gabowl(ガボウル)www.mugendai.org/gabo/
■お問い合わせはunityparty@hotmail.comまで
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