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久しぶりに新刊『「谷根千」地図で時間旅行』が晶文社から出ました。かつて『小さな雑誌で町づくり』を出してくれたところです。この本はその後『谷根千の冒険』というちくま文庫になりました。
お世話になった方に送ろうと思って、何年か前の寄贈リストを見ると、何人もの方がもういらっしゃらないのです。辻井喬さん、杉本秀太郎さん、岡部伊都子さん、井上ひさしさん、黒岩比佐子さん、それぞれにこの町を愛してくれた方たちでした。
そして京都の鶴見俊輔さんがなくなられました。「谷根千」の終刊とハーバード大、エール大、オクスフォード大の図書館がバックナンバーを入れてくれました、と報告すると、「きっと活用されると思います」と喜んでくださいました。
尊敬する方が亡くなると、その方の本を読むのです。メキシコ旅行のあとに手に入れた『グアタルーベの聖母』の一節が目を引きました。
「広く定義された亡命とは、少数の有名個人が国外に脱出する事につきるのではなく、現在の国家体制を見わたすことの出来る一つの視点を作ることであり、大衆の思想に関わりのある範疇となる」
メキシコは亡命に寛容な国で、トロツキー、カストロ、ゲバラ、日本の佐野碩などを亡命者として受け入れた。それにたいし、日本は戦後、「その国の原政府に楯突くような人間は非国民であるから、そういう人間を日本の国は受け入れるべきでない」と考えて来た。この本は1970年代の本なので、金大中事件をその例に挙げています。
また、ナチスからアメリカに逃れた多くのユダヤ人知識人(そしてアメリカ国籍でノーベル賞を取ったりした)、そういう「有名個人」だけでなく、ふつうの人々もその国の政治や社会制度に堪えられなくなったら亡命する、日本では「難民」ととらえているが、それも「亡命」と位置づけた時に、「大衆の思想」にかかわると鶴見さんはいっています。
このことを切実に感じたのは、チベットの焼死事件をあつかった池谷薫監督の「ルンタ」をみたことと、先週、クルド人家族の話を聞きに行ったからです。
中国政府によるチベット人弾圧は激しさを増しており、堪えきれない憤懣が焼死という自傷に向っています。子どもだけでも逃がしたい、とヒマラヤを越えてダラムサラに必死の国境越えをさせる親が少なくありません。それでもチベット人は日本に200人くらいしかいない。
いっぽう、クルド人のことは日本で知られていません。中近東の先住民族で3000万人近くいるにもかかわらず、オスマントルコ崩壊後の英仏などの勝手に引いた国境線によって、国を持つこともできず、トルコ政府のもとで、差別を受け続けています。徴兵に行けば、クルド人がクルド人ゲリラPKKと戦わせられます。
在日クルド人は埼玉県の蕨市や川口市だけで1000人もいるそうですが、そのうちで「仮放免」という名の不法滞在でなく「在留許可」をとれた人はごくごく少数です。日本政府が彼らを亡命者ととらえず、国内に入れると何をしでかすか分からない「難民」と考えているから。それを私たち日本人も無批判に受け入れているのではないか。建物解体や廃棄物処理などで一生懸命働いているクルド人も、いいだけ安く使われてある日、国外退去ということになりかねないのです。
安保関連法案が通ったら国外に脱出する、という人がいます。もちろん世界のどこに住むのも自由です。でも多くの人は言葉もできない、仕事もない、渡航費用もない、永住許可も出ないなかで、「飛び立ちかねつ、鳥にしあらねば」といった苦痛を味わっているでしょう。しかもクルド人やチベット人の味わっている苦しみとは比べ物にならないとおもいます。もちろん安保法案には反対ですが。
この本には「スペイン戦争」に国際義勇兵として参加した人たちの事も出てきます。
いま、「若者を戦場に送らない」「人を殺したくない」といってみんなが安保関連法案に反対しています。もちろん私はそれを支持します。しかし、地球上のどこかで大義なき虐殺や弾圧が起こったとき、銃を取る決意をしないとはいえません。
鶴見さんのこの本はいろんなことを考えさせてくれました。
最後にお会いした2010年、鶴見さんは「これからの世界にはエクストリムリー・ローカルという言葉が大事ですよ。『谷根千』はそれをして来たんだね」とおっしゃいました。上に述べた事と逆みたいですが、「国家や自治体の都合より、地域の暮らしを優先させる」そう思ってきた私たちは補助92号線の道路事業にも反対します。オリンピックまでの東京の不燃化構想にも反対します。リニア新幹線に反対している大鹿村ほか沿線の住民運動にも連帯したいと思います。

2015年8月17日   森まゆみ

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