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コロナの中の開店閉店——そして東大周辺の異様な寂れ方について


浅嘉町

昨日、本郷を自転車で走ったら、正門前などほとんどシャッター街になっている。賃貸物件の張り紙が目立つ。100年も続き、本当の老舗と言えるパンの明月堂、ハヤシライスの万定が閉店、コロナの前にはケーキの老舗近江屋が閉めた。近江屋は天井が高く、まるでホテルのロビーのようなテーブルで、ケーキとお茶が飲めて、あそこで少人数の勉強会なども開いていた。他にもたくさんある。  
白山の方まで戻ってくると、浅嘉町の斜めの通り、昔、夏目漱石が手紙に「浅嘉町で花を買う」と書いた通りが、バタバタと閉店である。おいしい割烹も、とんかつカレーの店も、ぬか漬けが自慢だった八百屋もなくなった。根津はん亭から独立した人の「伊佐」と言う串揚げ屋も行く前になくなっていた。だからと言って、後にマンション建てても、今売れるとも思えないけど。  


千駄木3丁目の藤屋

すでに「谷根千」を始めた時に15あった銭湯は3つしかない。動坂上の富久湯、三崎坂の朝日湯、池之端の六龍鉱泉、「谷根千」10号で豆腐屋特集した時に取材した手作りの豆腐屋は20軒あったが、今は4軒しかない。上野桜木町の藤屋、千駄木5丁目団子坂上のたけや、不忍通り沿いの千駄木3丁目の藤屋と根津2丁目の越後屋。豆腐屋は確かに小商いだ。かつてに比べると一丁140円は高いように思えるが、100丁売れても14000円。他にがんも、厚揚げ、あぶらげ、おぼろどうふ。あるお店に聞いたら1日出るのは70丁くらいと言う。「それでも小学校の給食とかで30丁とか注文あると嬉しいね」と言った。小学校がスーパー豆腐でなく、地元の手作り豆腐を使ってくれているのは大事なことだ。それも休校になった時は辛かっただろう。


団子坂上のたけや

地域を繁栄させるコツは「地元に頼んで地元に金を落とし、それを循環させる」と言うことだ。「谷根千」は最初から、地域の印刷屋さんに頼み、地域においてもらい、何がしかの手数料も払い、取材に行くときもお土産とか、地域で調達してきた。地域で飲んで食べて、お金を落としてきたつもり。「給付金10万円はこの町で食うぞ」と言った人もいる。
一方、谷根千あたりでも1万円を越す居酒屋が増え、話題だったが、どうなっているのだろう。地道な職人の長男曰く「年収2~300万の若者が一万を越す店に行けるわけない」。知人の太田和彦さんは「1万円を越すような店は居酒屋とは言いません」と言明していたが。ともかく、私たちが行ける店ではない。 谷根千御用達はおいしくて安心のイタリアン・ターボラとか、二階でみんなで食べて飲んでもお財布にこたえない海上海とかです。環境保全や建物の保存などの運動をしていると、打ち上げをしよう、と言ったとき、誰かが行けない値段のところは使えない。2000円代、高くても3000円まで。学生は1000円でいいよ、と言える店でなければ。

東京ではコロナになってから、神保町の餃子スイートポーズ、キッチン南海、木挽町の辨松、池之端の鷗外荘、湯島の江知勝、有楽町の牡蠣で有名だったレバンテ、中野の古いパブ、ブリック、京橋の大阪うどんすきの美々卯などの有名店や老舗の閉店がニュースになった。まるで、閉鎖が決まってから客が押しかけた上野本牧亭のように、閉店前に長い行列ができた。池之端のホテルパークサイドも閉業だ。我が学生時代の早稲田の前野書店、講演に呼んでくださった静岡の戸田書店も静岡本店閉店である。懐旧の情にふけるだけでは済まない。
ことに気になるのは「谷根千」にも広告を出してくださっていた鷗外荘。森鷗外の新婚の頃の家と同じ番地で、今残っている建物は鷗外が住んでいたという(資料によれば二階があったはずだが)。もう一つは江知勝。明治時代から続く牛鍋屋、豊国と人気を二分した名店だった。私も3回ほど行った。(いつもご馳走になっただけ)両方とも、建物は保存すべき価値がある。
もちろん、長年よく働いたし、後継者もいないし、という潮時廃業もあるだろう。でも、夢を抱いて、私たちの街にお店を出した若い人たちの諦め閉店は辛い。人柄がよく、町の人の居場所になるお店、一人でも入れるバーやカフェ、出来るだけ支えよう。声もかけよう。


本郷通りにわずかに残った看板建築

町のあちこちに貸店舗募集

ちょっと横道にそれるが言っておきたい。
本郷通りの片側は東大だが、片側とその奥は学生が長らく下宿し、食べたり、喋ったりする町だった。千代田線根津駅ができて、東大関係者の半分は本郷三丁目でなく、根津を使うようになった。そのうち南北線の東大前駅ができ、今では人の流れは三分割されているのだろう。ともかく東大は文京区の中で、数万人の学生、院生、教職員を擁する一大組織である。
コロナで東大は校内立ち入り禁止が長かったし、授業もオンライン。周辺の町は閑散としている。ラーメン屋もカレー屋も定食屋も。大学町という言葉があるが、大学は学内のことを考えるだけでなく、学生教職員を受け止める町のことを考えないのか。私のところには、東大の先生方から、学生に町をガイドしてほしい、とか、学生が町に入り込む手づるになってほしいとか、タダ働きの虫のいい依頼がくる。
町にしてもらって当然だ、というのではいけない。町と共存することを考えてほしい。東大にはそれこそ都市計画も商業も経営も建築も観光の学科もある。協力して周辺の町を元気にするプロジェクトを立ち上げられないものだろうか。それは研究成果にも繋がるだろう。遠くの自治体の委員会の委員長だの、参与だの、顧問だの引き受けておられる先生方、この地元本郷の惨状をどうにかしようと思わないのですか。

2020年7月28日  森

補足。 閉店したのは、歌舞伎座の前にある木挽町の辨松です。最初、うっかり日本橋の弁松と書いてしまいました。現在もご盛業の「日本橋弁松総本店」様にご迷惑をかけてしまったこと、心よりお詫び申し上げます。 また、8月14日には、池之端の六龍鉱泉が突然の廃業。名物の黒湯が出なくなってしまったからです。近所の常連さんたちは「黒湯でなく、白湯でいいから続けて欲しい」と願っています。

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