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上野公園

上野公園に散歩に行った友人が文化会館の前の大木に伐採のテープが巻かれていると教えてくれた。そうじゃなくても、上野公園は最近少しおかしい。
奏楽堂前のいい感じに育ったハナミズキなどがやたら切られてむき出しになった。
皇太子(現天皇)ご成婚記念の池と噴水が壊された。後には、記号のような噴水ができた。
さらに「来場者の利便のため」巨大なスターバックスとパークサイドカフェもできた。
そして広場が広くなった分、そこでテントを張って物産展とか、ミニスカートの歌手大絶叫みたいな安っぽいイベントが行われている。これが「上野の森の文化」なのか。
西洋美術館が世界遺産になった。ル・コルビュジエの設計になる建物群で構成物件の一つにすぎないのに、世界遺産好きの日本人は大挙して押し寄せる。西洋美術館は今クラーナハ展を開催しているが、絵は見ずに、前庭からバシャバシャ写真を撮るだけだ。
その反対側に前川國男の代表作、東京文化会館があるが、こちらには興味がないみたい。

私にとっては子供の頃、空間の力を刻みつけてくれた名建築である。
1961年の開館で、その頃読売日響の定期公演はここで行われ、私はピアノの先生の夫君に頼まれ、指揮者に花束を渡す役を何回かした。万雷の拍手の中、ライトを浴びた舞台で、花束を指揮者に渡した。小ホールでは友達のおさらい会などが行われ、建物じゅうを駆け巡り、かくれんぼした。高校の時は日フィルの会員となり、安い四階席から小沢征爾の「ファウストの劫罰」を聞いたりした。天の川という星のような天井、上野公園の落ち葉をイメージした床のタイル、大きな窓越しに見えるクスノキやイチョウ、開演前にかっこむ精養軒のカレー、真っ赤な螺旋階段、これらは私のかけがえのない原風景である。

この会館は上野駅から至近で、音響も良いため、今でも稼動率90パーセントで、開館後55年経つ今も大切に補修され使われている。しかし、上野公園そのものには、絶えず開発圧力が加えられ、噴水のところに電波塔、スカイツリーが立てられそうになったり、不忍池の下に巨大駐車場が作られそうになったり、利便性のため駅と各美術館を繋ぐ地下通路が作られそうになったりした。
上野公園は台東区の風致地区で東京都の風致地区でもある。
しかし平成20年、都は「上野公園グランドデザイン検討会」(進士五十八委員長)を開き、その報告に従って上野公園再整備計画を作り、各ゾーニングごとに利用者の意見も聞かず、大規模な工事を進めている。こども動物園のケヤキ並木も、動物園入口にあった大木も、こども遊園地も壊された。
そして今もう一つの工事が進行している。
上野駅を北に50メートルずらす。そうすれば東京文化会館と西洋美術館の間の道につながり、動物園までまっすぐ行けるというのである。そして車は二つのロータリーで折り返し運転にすれば、改札を出た人々は信号を渡らずに公園に入れるというのだ。その工事のために道を付け替える。そのために今園内にある「支障木」を「撤去」するというのである。そのうちの3本は上野公園開設100年を記念して都が植えた木だ。

恩賜上野公園は、寛永寺以来の400年近い歴史を持つ森であり、明治になって日本最初の公園として整備された。その歴史を鑑みず、観光の利便のためにどんどん長寿の木を切るようなことが許されていいのだろうか。すでに上野公園は公園とか森というにはふさわしくないほど木が少なくなってスカスカである。公園内にはあまりに道路と施設が並びすぎた。東京オリンピックまでに整備をという掛け声で、開発そして利潤を目論むコンサルや土木建設業者の言うがままになってはならない。またホームレスを追い出すために、木を切り、明るい公園を作る、みんなが楽しめるイベント広場を整備するというのも間違いだ。

公園は人が憩い、くつろぎ、静かに思い、新聞や本を読み、子供を遊ばせ、木漏れ日を楽しむ場所である。園内に車の道路や新しい巨大施設を作るような発想をやめ、上野公園には公共交通を利用してきて、園内を散策すればいい。高齢者や障害者のためには小さな電気自動車でも園内を走らせたらいいだろう。この公園口工事も2020年オリンピックまでに、の掛け声で行われている。巨額な税金を使い、自然や歴史を破壊するのがオリンピックだということがわかったら、協力する住民はいなくなるだろう。

*このことをキャンペーンして、1日半で10000もの賛同者を集め、とりあえず12月19日の伐採は無くなりました。しかし、計画はまだなくなったわけではありません。引き続き、木が切られないように、切った分を植え直すように、都を注視していかなければなりません。

2016年12月19日   森まゆみ

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