私たちは四半世紀、この谷根千の町に生きる普通の人々の暮らしを聞き書きによって紙の上に記録してきた。しかしその人の語り、声、表情までは記録できない。
また町は開発によって今日も変わっており、モノクロ写真はそれなりに撮って誌上に紹介したが、なくなる前にカラーの映像で残しておきたいと思いながら、技術と時間がなくてそれができなかった。紙の谷根千が終わるちょうどこの時に私たちと考えをおなじくし、専門的技術を持った人々、「映像ドキュメント」の皆さんと出会うことができた。なんという僥倖だろう!すでに明治20年代生まれの方に話を聞くことはできないが、今町に残っているもの、お元気な方達のお話をすこしでも映像で記録したい。また遠くの、いや世界中の人々に谷根千の現在を届けたい。(森まゆみ)
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