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日々録   2005年12月
No.1027  2005年12月22日(木)

[ブックオフより怖い]

 それは昨日の午後4時半頃、お隣で自動車整備の仕事をされている阿久津さんがやってきて、ドアを開けるなり「火事だよ!」と叫んだことで始まりました。

 店の周辺は住宅が建て込んでいることもあって、ときどき火事が起きます。去年だか今年にも、アパートが全焼して老人が亡くなる、という事件がありました。ですから、またどこか近所で火が出たのかな、などと呑気なことを思いながら、でも取るものもとりあえず表に出てみると、なんと燃えているのは店の入っているマンションの2階。隣の「長谷川クリーニング」さんの真上の部屋の、狸坂に面した部屋の窓から、オレンジ色の焔と黒い煙が吹き出しているのを見た瞬間は、さすがにクラッときました。

 火に包まれたマンションに、何台もの消防車から大量の水が放たれ、あの本もこの本も、すべてがびしょ濡れになり売り物にならなくなってしまう、まずそんな光景がゆっくりと脳裏に浮かび、次に「泣きっ面に蜂」とか「弱り目に祟り目」とか、ともかくそういった類の諺が頭の中をぐるぐる回りました。一週間ほど前、旧い友人たちと久しぶりに飲んだとき「店はどうなの」と訊かれ、「かなりの低空飛行だけど、でも潰れることはないから大丈夫」と答えたことなども思い出しました。いくら保険に入っていても、戻ってくるのは本を仕入れるのに使ったお金だけ。いま棚に並んでいる本は決して戻ってはきません。

 辺り一帯に異臭が立ちこめるなか、時間にしたらほんの一瞬のことだったのでしょうが、そんなことを考えました。もう心臓はバクバクしてます。ともかく急がなければならない119番への連絡は、すでに阿久津さんがしてくれていたので、マンションの非常ベルを鳴らしたり、管理会社に電話したり、それ以外のことを手分けしてすると、しばらくは何もすることがなくなってしまいました。それから消防車のサイレンが聞こえてくるまでの間の長かったこと。実際は5分もかからなかったと思うのですが、ずっと心の中で「早く来てくれ、早く早く!」と念じていました。

 次々とやって来る消防車から、銀色の服に身を包んだ消防士さんたちが降り立ち、素早く分散してテキパキと消火活動を始める頃になると、ようやく気持ちが落ち着いて来ました。ふと周りを見ると野次馬の数がすごい。不忍通りの反対側とか城北信金の前とか、文字通り鈴なりの人だかり。自分も他所で火事があったりすると見物に行くので人のことは言えないのですが、こうやって当事者の側に立つと、あれは嫌なもんですね。みなさん目が輝いていてらして。まあそれはともかくとして、さらにしばらくすると、どうやら大丈夫そうだという雰囲気が伝わってきて、やがて「消火しました」という報告がありました。火事の原因は天ぷらの油だったそうなのですが、その火元の部屋以外には延焼もせず、けが人も出ず、マンションの人たちも一安心です。ただし、長谷川クリーニングさんと僕たちを除いて。

 天井から水が漏れてくる可能性については、最初に火を見たときから考えていました。でも、現実にその恐怖に直面したのは、長谷川さんの店内に滴り落ちる水を見たときからでした。いろんな人がやってきて、「ほうろうさんは大丈夫?」とか「こっちはまだ水漏れしてませんか?」などと言っていきます。具体的には天井に穴があいているところ(うちの店には多い)は当然として、クーラーも危険。長谷川さんのところは蛍光灯の設置部から漏れている、という情報も入り、そういう場所の真下に置いてある本を一旦撤去したりするのですが、そのはしから「天井の水はどういうふうに回ってくるかわからないから、どこから漏れるかはわからない」なんてアドバイスもあったり。「じゃあどうすればいいのよ」てなもんです。結局、消防士の方から大きなビニールシートを数枚貸していただいたうえで、閉店まで天井を見上げて過ごすことになりました。比較的早く消し止められたので放水の量もそれほどではない、もうこれだけ時間も経った、場所的にもぎりぎりセーフなのではないか、という希望的観測ももちろんあるのですが、結局今日になるまでは心安まることはありませんでした。

 というわけで、結果的には水漏れもなく、消火活動で道路が封鎖されていた1時間ほどお客さんがなかったことを除けば、被害という被害はありませんでしたが、ほうろう開店以来最大の危機だったことは間違いありません。長谷川さんの天井には大きなシミができているのですが、それはうちの店とを隔てる壁のすぐそばです。最初に火事を発見した阿久津さんが、たまたま狸坂を通りがかってすぐに通報してくれていなかったら(長谷川さんの店内の火災報知器が鳴り出したのはそれからしばらく経ってからだったそう)、と思うとゾッとします。阿久津さんありがとうございました。あと消防士の方々もとても親切で、心強かったです。感謝します。

 でも、ほんと怖かった。

(宮地)


<急告>
 12月の毎日曜日に開催している近藤十四郎さんのライブですが、明日23日(祝)の夜も行うことになりました。20時頃から1時間ほど、入場無料です。みなさんお誘い合わせのうえ、お越しください。

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