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日々録   2005年10月
No.1018  2005年10月18日(火)

往来堂での「不忍ブックストリートの50冊」フェア、後半もがんばっていきますよー。これまでお運びくださった方々、お買上げくださったみなさま、ありがとうございます。

さて、私の選書は「水族館劇場」入門編、ということで3冊。
先ずは「水族館劇場」とはなんぞや、という方のためにちょっと説明を。

「水族館劇場」とは、劇場名ではなく、87年築豊で旗揚げされた桃山巴率いる劇団名です。
毎年5月から6月にかけて、団子坂上の大観音光源寺の境内で大掛かりなテント芝居を打ちにやって来ます。
度肝を抜く大仕掛けと、アイヌ、山窩、馬喰、旅芸人、唐ゆきさん、女工、移民といった、力弱き人々に視点を据え、日々歪んでいく社会に対する怒りを桃山節とも云える独特の台詞まわしでもって、毎年観客を釘付けにしています。まさに大人のお伽噺、年に一度のお楽しみです。
「流浪」「さすらう」ことにこだわる彼らは、年末年始には身体ひとつで、上野公園や、山谷、寿町などの寄せ場で路上公演も続けています。来月には北九州小倉でのテント公演が控えています。

そんな「水族館劇場」をひとりでも多くの人に知ってもらいたい、また、毎年行ってるけど話が複雑に絡まっててちょっと解り辛いのよ、という方のために、せんえつながら私流入門編ということで、宮本常一/著『忘れられた日本人』、川端康成/著『浅草紅団』、大熊亘『ラフミュージック宣言』を選びました。

中から、本日お薦めするのはこの一冊。

『ラフミュージック宣言』大熊亘 インパクト出版会 2310円
チンドン、山谷、ロマ、ブラス。路上音楽家大熊亘、コツコツ怒り、大いに語る。(フェア用小冊子の推薦文)

人柄は竹を割ったような人に憧れるけれども、町並みは、区画整理されてるより、凸凹しているのが好き。音楽も然り。ここに現われたるは、おぉ、まさに、ROUGH MUSIC・・・、ラフミュージック宣言!
著者の大熊亘(わたる)は、私にとってコツコツと怒りを持続させている敬愛すべき反骨のクラリネット奏者であります。
彼は10代から音楽を始め、20代で、コンポステラのサックス奏者、今は亡き篠田昌巳に誘われ弟子入りした「東京チンドン長谷川宣伝社」でクラリネットに出会い、その後自らのバンド「シカラムータ」の他、映画『豚の報い』のサウンドトラックを担当したり、阪神大震災では被災地でコンサートを開催した「ソウル・フラワー・モノノケ・サミット」など、いろいろな場で活躍しています。
2003年には古書ほうろうでのNPO「環音」の報告会でミニライブをしてくれたこともあります。チンドンで、パンクで、アヴァンギャルド。ジャンルの垣根を超えた彼のクラリネットにはざらざらとした魅力があります。

2001年に出版されたこの本は、それまでの10年ほどの間に様々な媒体に発表してきた文章を加筆訂正しつつまとめたものです。

バブルで変貌を遂げつつあった『キューポラのある街』、川口界隈にチンドン楽士として通っていた頃の話で幕を開け、前半は八木節の血を引くといわれるチンドンのルーツを、飴売り、ジンタ、大道演歌師・添田唖蝉坊、本郷座を満員にした「浪界の王者」桃中軒雲右衛門などを辿りながら、様々な文献からの引用を交えてひもときます。
その頃しのばずくんがいたかどうかはわかりませんが、日本で最初の、軍隊のではない民間吹奏楽団(ブラス)の初仕事は、明治期不忍池にできた競馬場のオープニングだったそうな。話は逸れますが、「シカラムータ」も不忍池の水上音楽堂でのイベントで何度か演奏しています。

後半は、バルカン、マケドニアのロマ、民衆文化に混合していった(元は音楽兵器であった)ブラスバンドから、彼が関わった映画『山谷ーやられたらやりかえせ』、「ソウル・フラワー・モノノケ・サミット」のピースボート・アジアンクルーズ、「シカラムータ」ユーロ珍道中へと、まるでクラリネットを吹き歩く大熊さんの後をついて歩くように、ラフミュージックの旅は続きます。もちろん全編通してそうですが、民衆の音楽には切り離せない時局的な背景や、差別、迫害といった負の歴史、現状も丁寧に語られています。
音源の紹介も豊富で、一瞬にして大熊さんの耳を奪ったというギリシャ生まれのクラリネット奏者ヨルゴス・マンガスや、内戦の犠牲となってしまった南セルビアのヨヴァ・ストイリコビヴィッチのブラスオーケストラなど、ううーっ、聴いみたい!と、ジャケットの写真を眺めながら耳がヒクヒクしてしまいます。

「水族館劇場」入門編としては、この本に語られている音の背景がきっと役立つはずです。
言わずもがなですが、国内外の大衆音楽への入口としても、多くの扉を持った本だと思います。そういえば、往来堂店頭には関口義人/著『ジプシー・ミュージックの真実 ロマ・フィールド・レポート』(青土社)という本も並んでいました。こちらも気になります。

さてさて、私の説明はこのくらいにして、大熊さんのクラリネットを水先案内に、汗と土の臭いのする音楽を旅してみませんか?

(ミカコ)

*おまけ*
クウネルの本『私たちのお弁当』に、実は私のお弁当が載ってます。ほかのみなさまに比べて、なんと貧相なことか!『クウネル』創刊号に掲載されたのでした。
『私たちのお弁当』は往来堂に並んでます。そうだ。この場で、ひとこと言わせてください!日々エラそうな私ですが、夫のことを「めし炊き係」なんて云ったことはありません!まるで「飯盛り女」みたいではないですか……。


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