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日々録   2005年7月
No.1004  2005年7月27日(水)

今日出した本のことなど>
 昨日に引き続き、「競馬・野球・サッカー・鉄道」棚のテコ入れ。海外の野球小説文庫を少々出したほかは、鉄道本中心の品出し。なかでもとっておきのおすすめは、『日本鉄道名所』全8巻。宮脇俊三さんが「編集委員のことば」で、わかりやすく説明してくださっているので、まずはそれを引きます。

 鉄道の建設は地形とのたたかいでもある。とくに勾配が難敵であった。建設者たちは、トンネル、鉄橋で真正面から取り組み、あるいは、さからわずに遠まわりするなど、数々の苦心を重ねながら日本の鉄道網を編んできた。私たちが、なにげなく平面的に乗っている鉄道も、そうした苦心を知れば、まったく新しい三次元の視角で楽しむことができる。
 線路縦断面図を満載した本シリーズは、それを満たすための立体的な鉄道名所図会である。

 で、線路縦断面図というのは何かと言えば、「鉄道を立体的に表現した」もので、「勾配のみならず、曲線、橋梁、トンネル、停車場、他線の乗越しなど、施設に関するほとんどすべてのデータが盛り込まれている」表です。そして、これが、国鉄全線分(一部私鉄も)載っていて、なおかつ詳細な解説に豊富な写真も付き、さらに宮脇さんの紀行エッセイや窪田太郎氏による「海外編」といった読みものも満載、というのが、この『日本鉄道名所』全8巻というわけです。

 この8冊は、鉄道ファンにとって、なかでも実際に列車に乗ることが好きで、乗っているその時間にこそ幸せを感じる、という人々にとっては、一生の宝物となりうる本です。そして、各巻巻頭の紀行文のなかで宮脇さんがそうされているように、この本と、出かける場所の二万五千分の一の地図を持って列車に乗れば、そんな幸せな時間をより楽しむことができるでしょう。このシリーズは、僕が日本各地の鉄道に乗りまくっていた時期の少し後で出ているので、実際にそういう旅をしたわけではありませんが、読んでいるとどんどん興奮してきて、今すぐにでも出かけたくなります。というわけで、本当はあまり売りたくないのですが、ほうろう開店以来最高に充実した鉄道棚を祝して、涙を飲んで出します。お買い求めの方は、ぜひ大事にしてやってください。

 ひとつ補足。宮脇さんの本はほとんど読んだという方でも、こういうなかに収録されているものは、意外と読まれてないのではないでしょうか(全集には入っているのかもしれませんが)。第2巻「東北線 奥羽線 羽越線 」のなかの「板谷峠から折渡トンネルへ」から、一部引きます。

 幾度でも乗りたい区間、もっと強く言えば、人を病みつきにさせる鉄道の名所がある。(中略)この巻が扱う東北地方にも、陸中大橋のヘアピン=カーブ(釜石線)、面白山トンネル(仙山トンネル)とその前後(仙山線)などいくつもあるが、私としては、奥羽線福島―米沢間の「スウィッチ=バック駅の四連続」にいちばん惹かれる。(中略)
 さいわい、この区間は私の住む東京からわりあい近い。東北新幹線が開通して、さらに便利になった。病みつきになりたくても北海道や九州では意のままになりにくいが、米沢までなら手近だ。だから何かにつけて福島―米沢間に乗る。仙台に行くときでも回り道をして乗る。今年も二月に乗った。(中略)
 列車の編成は意外に長く、七両もつながっていた。
 スウィッチ=バック駅に出入りする列車の場合、何両目に乗るのがよいか。前進のときは最前部、後進になれば最後部、というように席を移せばスウィッチ=バックを最大限に楽しむことができるが、いくらガラ空きとはいえ、車内をあわただしく行き来するのは面倒なので、後進で駅に入る赤岩と板谷まではうしろから二両目に坐り、配線が逆になる峠と大沢では前部に席を移すことにする。

 宮脇さんというと、「文章の上手さ」や「上質のユーモアに包まれた文明批評」などといったことがよく言われるわけですが、鉄道ファンの多くが彼をここまで愛するのは、この「回り道して」まで何度でも乗りたがり、「何両目に乗るのがよいか」真剣に考え、実行する、という部分がまず根っこにあるからです。今さら僕が言うことでもありませんが、久しぶりにその文章を読んで、共感を新たにしたので(10代の半ば頃、宮脇さんの本で板谷峠のスウィッチ=バックのことを知り、それこそ毎晩、自分もそこを訪れることを夢想したものでした)。

(宮地)

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