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日々録   2003年7月
No.672  2003年7月22日(火)

 裏から漫画の在庫を出そうとして、通りがかりに店の奥に置いてあるコンシンネの鉢の根元をふと見ると、昨日はなかったはずの直径3センチほどの穴があった。けっこう深そう。闇が覘いている。水やりでえぐれる感じとは違う、生きものの意図が感じられる穴だ。耳の後がゾワッとする。モグラにしては小さいだろう、じゃ、鼠か・・・。ゾワゾワッ。しかし、既に右手は、コンシンネの細長い落ち葉の先で、穴の中を探っている。
(何かが飛び出してきたらどうするんだよう。)と、思った瞬間、上の方からから私の手の甲に何か重量のあるものがぶつかり、バタバタと不器用そうな音をたてて天井へ飛んだ。ぎゃッ。何度も蛍光灯にぶつかり、本棚にもぶつかり、その度に重たそうな音がした。
 蝉だ。
 床に落ちたところを、宮地がそおっと捕まえて外の植え込みに逃がした。

 ところで、この穴、何か心当たりある?
 気を取り直して、近くにいた神原に訊いた。当然、神原も知らない。

 さっきの蝉さぁ、ふ化したのかなぁ。
 なんて、ほんの冗談のつもりだったのに、もう一度コンシンネに目を移すと、高さ1メートルくらいのところに、本当に抜け殻がとまっていた。

 7年間ずっとコンシンネの根に守られながら、気まぐれな水やりもものともせず、2003年7月22日午後8時、ミンミン蝉は古本屋でふ化したのだった。
 
 7年と言ったらうちの店とほぼ同い年じゃないか。正確には、98年に「古書ほうろう」が誕生した時に友人が贈ってくれた鉢だから、正にほうろうの5年間を共に過ごしてきたのだ。
 そして今日、土から出て、滑りやすそうな幹をよじ登って、更に葉を伝い、ユラユラする頼りない細い葉にしがみついて、殻を割るため踏ん張ったのだ。ふ化するのには、どのくらいの時間がかかるのだろう。渡辺淳一はうちの店とは毛色が違うので、新しくてもあまり高く買い取れません、なんてお客さんに説明していた時も、スピリッツの「THE3名様」を読みながら乾いた笑い声を漏らしていた時も、蝉は店の奥で、ウーンショと、羽を広げようとしていたのだろうか。
 ハレの日に、今日は向いていただろうか。涼しすぎはしないか。ミンミン蝉。
 
 あッ。
 ひょっとしたらこの後も、同じ時に産み落とされた卵たちのふ化が続くのだろうか・・・。

(アオキ)

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