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日々録   2001年5月
No.65  2001年5月24日(木)

南の島 雨は上がって一日快晴
キルデアで馬と戯れてからふたたびダブリンのパブで飲んだくれ
イスタンブールの丘の上では月世界旅行が5分でいくらトルコ・リラだったかしら
天体望遠鏡をのぞきこんだわっしらちゃっかりガメられたにちげぇねぇ
エーゲ海で真っ裸 魚の骨なら猫どもにくれてやれ
こっちにゃ松ヤニの白ワインを樽ごと持ってきとくれや
アンダルシアでフラメンコの姉ちゃんに手拍子足拍子 黒髪の牛とにらめっこ
バルセロナに湖はなくて
今でも火矢が夜空を飛び交っているもんだからおちおち寝てもいられやしねぇ
寝不足のままタンジールからラクダに揺られて数時間
谷底のホテル・ビッグ・ピンクでまた電気が停まっちまった
シャワーから出るのは砂ばかり こうなりゃもう一服して夢みるばかり
寝るばかり
死海でぷかぷか浮いてるつもり
明日はどっちへ行こうかと考えながらさ

もちろんうそさ
南の島にいる
雨は上がって雲ひとつないいい天気
泡盛一本 ちびちびやりながらなんにもしない
椰子の木陰で何十年のうちの一日が暮れていくのをただ見ている
手のひらについた砂の香り
見えるのは波の音だけ
草を揺らす風の匂いが聞こえるだけ
他にはなんにもない
何十年もおんなじ椰子の木陰にただこの一日はわっしがいるだけ

もちろんうそさ
日が暮れてうちへ帰る
ひと風呂浴びて縁側で涼む
爪切りで切って飛んだ爪の先のよな三日月が
西側の赤瓦の屋根の上にぴったりと張り付いている
と思うやあっというまに落ちてしまった
でも頭上には満天の星空 うれしくてまた外に出る
どこかで誰かが三線を爪弾いてるのが聞こえる
集落の灯りを背にして北へ向かって歩いてゆく
草っぱらの一本道を丘の頂上めざしてく
あの丘を登れば海が見える
そこでぼくはふたたび世界を支配することができるかもしれない
丘を越えれば海に出る
海を越えればどこにだって繋がっている
君の住む町にも さらに遠くへと続く路にさえも

 行間という波間に小舟で漕ぎ出して
 右へ行く者もいれば左へ向かう者もいる
 君に話したいことがもっとあったはずなのに
 ぼくの話を聞いてくれる君がどこかにいなくなってしまった
 そんなことを考えながら桜坂あたりを歩いていたよ
 ネオンのひとつひとつを噛み砕きながら千鳥足で
 いつか知らぬ間に傷つけてしまった友だちに
 今では何もかも拒絶されてしまった友だちに
 話したかったことよりたくさんあったはずなのに
 (グラスの中 知らぬ間という記憶はどろりと水銀の味がする)
 (傷つけた事実だけは新たな記憶として発光し続ける)
 そいつがほんとにあったものなのかわからなくなってしまった
 あっちへ行ったりこっちを見たりしてる間に
 ネットの波に飲まれてしまったというわけだ
 それでも早く帰っておいでと呼ぶ声がして
 救命ボートを探してみたが
 接続料ばかりがふくらんでいた
 ‘そいつ’はほんとに積んであったはずなのだが
 暗い海の底へ沈めてしまったような気がする

今夜丘のてっぺんにひとり立ち
満天の星空の下 四方の海を360度見晴るかし
ふたたび舟を出してみる
行間という波間に小舟で漕ぎ出して
右へ行かせる者もいれば左へ向ける者もいるだろう
でも臆してはいけない
この海を行く者は誰もがその舟の絶対的な船頭である
自分の波長で進めばよい
このくらいのテンポなら
漕いでゆけるはずだから
遠くからジプシーの唄声が聞こえる
大地の奥底を伝わってくる
こんなに深い海の底にも
そんな唄が流れているのが聞こえてくれるだろうか

もちろんうそさ
南の島は東の空がもう白んできた
今日もまたいい天気であるようだ
わっしもそろそろ帰ろうか
この高気圧に乗って
君住む町へ
あの部屋へ

(山崎)

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