もう文庫本になっているらしいけど大変良い本です。時代小説でベストセラー作家の佐伯泰英さんが、たまたま求めた別荘の下に、すごい建物が売りに出ていた。その学術書の岩波書店の創業者の別荘を買って修復することになったいきさつ。ご自身のがん。昔闘牛などの写真家であった頃、作家堀田善衛さんの運転手をしていた頃の思い出などが混ざり合い素晴らしいエッセイです。堀田夫人に「佐伯」なんて呼び捨てにされてこき使われたりね。もちろんこの別荘は吉田五十八の作品。その番人を自称する佐伯さんの謙虚な思いと所々に出てくるクールでコモンセンスに溢れるお嬢さんの姿が好感持てます。何か賞とっても良かったはずのエッセイ。あ、これで建築学会文化賞をお取りになったのでした。