10月23日

夜、岡本宮之助さんの新内を上野桜木市田邸できく。岡本文弥師匠の聞き書きをやっていた頃、美青年であった宮之助さんも渋い貫禄ある新内を語る人になった。今日は珍しい口語文の「耳なし芳一」、コラボレーションの現代美術家馬渡吟治朗さんの人形にぴったり。平家物語の怨念と幽霊が立ちこめる空間。樋口一葉「十三夜」になってほっとした。 

そういえばお関を乗せた人力車はこの辺りを通ったはず。玉の輿に乗った女の哀しみと、零落した男の苦しみと、かつての恋人の情念がより合わさって誠にその場、その地にふさわしいものであった。

くま推奨店 其の三
同じく聞きに来ていたサトコと、言問通りをくだりながら、一杯やろうということに。今の余韻では、やっぱり日本酒。「みちのく竹家」へ。初期の頃、谷根千に広告も出して下さっていた店。今は一階は豆腐料理屋になり、家族で二階で秋田料理、二代目さんが活躍の時代になった。なんだか居間のように落着ける。トンブリやミズ、キノコで秋田の酒を飲み、しめに、きりたんぽ鍋を一人分、ちょうどよい量だった。昔、ご主人が大きな網で銀なんをあぶっていた姿を憶い出す。これもセンチメンタルジャーニー。