10月24日

今日も早めに仕事を済ませて谷中を見て歩く。ジム・ハサウェイさんの路地奥の展示が楽しい。前には幼児だったお嬢さんが中学生で、すっかり大人びていらした。上野谷中の時空を飛んだ絵も素晴らしいが、あいだに昔の絵はがきが飾られている。百年前、上野の景色でアメリカに送られたはがきが地球を一周して今、ここにある、スゴイよね、とジムさん。ロングドレスの家族写真はジムさんのご先祖。

「どこ?」
「ニューヨーク州の田舎」

「町の名前は?」

と言ったら、ジムさんふざけて
両手で頭に角を出し、それから私を指差して

「鬼、あんた!」と叫んだ。

「オニアンタ」という町だそうだ。

この日。松山巌さんと芸大・台東区の主宰するアート展で話す。昭和20年、愛宕山の路地でうまれ、石屋の父を持つ松山さん、昭和二十九年、動坂下の長屋で生まれ、歯医者の父をもつ私。やっぱり30年代の子供は楽しかった話から始まり、高度成長、バブル経済、小泉内閣の新自由主義でどのくらい町のすき間がなくなり、空がせまくなり、子供が息をつけなくなっていったか、といういい感じのころ、雨が降って、おしまい。それにしても、言問通りぞいの不思議な特設お茶の間で話しにくい舞台ではあった。終わってほっとした。

くま推奨店 其の四
もちろん打ち上げをしようと、というか松山さんは単に飲みに来たらしく、4時から飲める所と言ったら日暮里駅前のそば屋、「川むら」しかない。幸い一席空いていて、おししいツマミさまざま、銘酒喜楽長でたのしい。ことにみんなが気に入ったのはとうがらし入卵焼き。絶品ですな。ここも谷根千をずっと置いて下さり、広告も下さった。私の店選びは人柄主義。どんなにおいしくても感じの悪い店には入りたくない。ここを仕切っているかっこいいお姉さんは、店主のホントのお姉さん。気っぷのいい方です。先代のころは普通の町のそば屋さんだったが、今は川むらでチビリ、がこたえられなく墓参りの回数が増えましたという人もいるくらい。