震災日録 1月25日 亀卜神事

きょうも鍵本さんと役場の方が運転してくださって、対馬の文化財をめぐる。天道法師という人のお母さんをまつった神社、法師の神社、いずこも椎の巨木がはえ、原生林の中を歩いて、気候のよい頃はさぞ気持ち良いことだろう。お日様から光が射してお母さんは法師を受胎したという。対馬は平地が少なく、海まで崖が迫る。一筋の道路からあばら骨のように集落へ至る道があり、その地名がおもしろい。本当に古いものが多い島である。離島振興法でここもまた公共事業が主な仕事になってはいるが、崖を削り浜を壊すような公共工事はなるべくしないで、文化を保護し、それが見学客を呼び込むようなしかけはできないか。すくなくとも見学してまわるには公衆トイレや休憩所は不足しているようだ。観光化すると団体客用の大きな景観を害するトイレなど造りがちであるが、そういうのでなくささやかで清潔なトイレはもうすこしあちこちにほしい。厳寒のなか見学した感想だ。昼過ぎに亀卜神事という古代からのめずらしい行事があるので見学に行く。なかなか始まらずたき火を囲んで男たちが魚の値段など話している。土地の言葉でほとんどわからず。ようやくお宮に魚が供えられ、ろうそくがつき、亀の甲らに金火箸があてられた。農業も漁業も吉、地震もなし、「関東地震多し」の字句にぞっとする。宮本常一が滞在した集落や大関対馬洋(つしまなだ)の墓にお詣り。かれは相撲取りをやめたあと、故郷に帰って区長をつとめたという。夜の便で福岡に帰る。