震災日録 12月14日 軍都東京

中島岳志さんと5・15事件、2・26事件の現場を歩く。犬養首相は官邸にいた。私は22歳のとき、溜池の出版社に勤めていて、いつも国会議事堂駅から首相官邸の脇を通って通勤していた。今は新しいガラス張りの官邸ができているが。警備の人に聞くと、野田首相はここに住んでいるとか。5・15の首謀者たちはタクシーに乗って官邸に乗り付け、簡単に中にはいっている。今日はハプニングで国会の衆議院を見学してしまった。天皇の貴賓室は淋しそうだった。天皇皇后お揃いで来ても部屋は別々らしい。
板垣退助が功労者として銅像があるのは解せない。あとは伊藤博文と大隈重信、これは分かるが。赤坂のTBSは近衛歩兵三連隊、高橋是清邸の近くに第一師団司令部と麻布連隊司令部、青山中学がもとの陸軍大学校、その近くに乃木大将邸、赤坂プリンスは李王邸、と軍都東京の姿を知ることができた。4時に東京駅で日本ナショナルトラストの被災文化財保護のための募金キャンペーン。しかしマイクを握って離さない観光庁長官がほとんど文化財と関係ないことを言って道行く人にはあまり伝わらなかったのではないかと思う。その上揃いのジャンバーのいわき市観光関係者が来てパンフなど配ったのでますますわからくなった。松方弘樹さん、辰巳琢郎さんは簡潔でさすがに的をえた挨拶をなさったが、こんどは通行人の方が黒山の人だかりで携帯撮影会を初めてしまい、一緒に写真を取ったり、握手をするために100円入れる人が多く、文化財保存の思いなどはほとんどなかった。4半世紀前、東京駅の外で署名を集めた時は誰も有名人は来なくてもじっくり話し、向うも聞いてくれて署名が集まった。有名人を頼んで金を集めるという方法はもう古いのではないかと思った。