震災日録 12月1日 アマチュアカメラマンたち

いよいよ祭の本番。朝6時に起きて弥勒起こしの神事を遠くから見る。ミルクユウというのはいずれ来る幸せな弥勒の世。弥勒は女の神で目が見えないという。それから干鯛の儀が長く続き、10時半より東と西の演目が始まる。世持ちうたきのまえに仮設テントに舞台がしつらえられ、大きな紺地の幕がかかっている。地唄は幕の後。御嶽の前には女性の神司が奉仕する。その前には麻の黒い縞の着物の長老たち。別の面には来賓や島に帰って来た人たち、もう一辺に子どもとおばあたちが坐る。一般の観光客などはその後ろだ。これは客に見せるものでなく、あくまで神さまに見ていただく芸能である。だからプログラムのようなものもない。休憩もなく夕方まで続く。
ニコンのクラブが40人、来ていたがなかにはひどいマナーの人がいる。高級そうな大きなカメラをもって一般席からどんどん中にはいってくる。女性の着替え中の楽屋を撮ろうとする。ばしゃばしゃシャッターを切る。マナーの良いある人に聞くと「昔はフィルムだったのでシャッター押すのも慎重でした。いまは一枚のメディアで700枚とか撮れますし、気に入らなければ夜のうちに整理できますから」という。黄色い線の内側にいた1人が少し前にでた島の人を「マナーを守れ!」とどなった。その意味は「俺の撮るのを邪魔するな」ということだろう。あんなに撮ってどうするのか。目的はアマチュアの写真展に出品して賞を取りたい程度のこと。それで神事を邪魔してよいのだろうか。なかには出番を待つ美しい少女を至近距離からばしゃばしゃやっている。撮られる方は嫌がって注意する人もいるのに、「すこしぐらいいいだろう」とか、まるでオヤジのセクハラ。ニコンも高級カメラを売りたいのか知らないが、島に入る前にマナーはきちんと教えるべきだ。私も初めてだったのでしてはいけないことをしなかったか、心配になったけれど。夕方に写真団体は引き上げ、あとはユークイといって各家に福があるように歌いながら訪問して歩く。かならずお酒とニンニクと島だこが出た。お酒は高台の上に小さな盃が置かれたが、自酌で飲むようだった。女性は一番座に入れない家もあった。