震災日録 9月6日 重茂の原始共産制

NHKの漁業の再建を目指す岩手県宮古市重茂の漁協の番組を母と見る。泣けて仕方ない。日本一のわかめ養殖の湾も船は800艘流され、50人の住民も流され、住宅は全壊。そのなかで伊藤隆一漁業組合長は立ち上がる。当てにならない政府を当てにせず、中古の船を買い、漁業の共同化を目指す。みんなでわかめ取り、売り上げは公平に参加者で分配。定置網の売り上げは復興に。
私も三陸の漁業を取材したことがあるが、あわび取り、ウニ取り、いずれも健全な競争が生きていた。重茂でもキャリア、腕に差がある漁師は何となく納得できない。悪平等ではないかと考える人もいる。しかし伊藤さんは災害の後、復興するにはひとり一艘の船を得られるまでは平等分配しかない、前へ行くしかない、とみんなをまとめて引っ張る。みんなもナットク。相互扶助的原始共産制があたたかい。『もう被災者じゃない、復興者とよんでくれ』という誇りに満ちた響き。
いろいろ試行錯誤のすえ、谷根千でも年齢、キャリア、能力は無関係に売り上げから経費を除いた残りの千円札をトランプよろしく公平に配ったことを思い出す。それでいいんだ! 日本にもまだ惚れられるオトコがいたんだなあ。