震災日録 7月20日 本をよむ

3人以上で飲むと話が割れ、二つの会話が混ざるともう何も聞こえなくなる。特に女性の高い声は頭に触る。BGMがあれば最悪。食器や鍋の音もひびく。電気はまぶしい、クーラーの音もつらい。もう外では飲めない体。

だから家で本を読む。クーラーは足が冷えるから、保冷材をタオルにくるんで頭寒足熱。桐野夏生『ナニカアル』。ホラーやミステリーは恐いので読まないが、『東京島』はおもしろかった。この小説は林芙美子が従軍作家として南方を旅するうちに船員と切羽詰まった不倫をしたり、年下の記者と恋をして子供を宿したりする話。「ほんまかいな」と思うが、あってもおかしくない。林芙美子は実子を持たず、泰ちゃんという養子をかわいがって育てた。小説は実はそれは芙美子が人知れず産み落とした子だという。「ありえない」と宣伝をみて敬遠していたが、図書館にたまたまあったので。小説はその辺が主なのではない。軍に協力し、軍に監視されながらも、戦場を観ずばおかじ、かかずばいられない作家の業。それを責める恋人の記者だって、戦争協力する新聞社から給料と取材費が出て南方で芙美子と会っている。出口なしの自虐。筆力のある小説に引きずり込まれた。

「ヤノマミ」も本でも読んだ。清潔で若々しい筆。ノンフィクション作家の臭みがない。しかし何か故意に隠されていることがあるような。セスナ機はどこにおりたのか。そこから集落までは何でどう行ったのか。つらくなると逃げ出す保健所までは歩いて行ったのか。車はないのか。映像では毎日狩りにいっているように見えるが、本では男たちはナマケモノで、昼寝ばかりして、いよいよ食べるものが底をつくとようやく狩りに向う。映像と本はこんなに印象が違うものか、驚いた。