震災日録 6月3日 田平の滝

昨晩遅くなって土盛海岸のブルーエンジェルに到着、朝になってみると一枚ガラスの向うに素晴らしい海が広がっていた。宿の主人は朗らかで上品な女性。大阪で会社を経営していた夫君が奄美が大好きで、ここに建てた保養所を終の住処にしてしまったという。なくなられたあとも1人でお住まいだ。「空港から3分ですし65歳以上は日本のどこでも1万2千円で行けますのよ。冬はお休みでのんびりやっています。台風の時はさすがに心細いですが、婿がガラスを厚いのに替えてくれたので雨も吹き込みませんし安心です。晴れた日も雨の日も海はいろんな表情でいいものですよ」

8時に中山さんが「奄美で一番きれいな滝を観に行きましょう」と迎えに来た。「だって雨ですよ」「だから水量が多くてきょうはいいはずです」。名瀬からそんなに遠くない。「初心者コースです。沢登りもありますが」という話だったが、台風のあと、道はかなり崩れていた。崖を落ちないようにそろそろと進むと「もう難所は過ぎました」と中山さん。その一言でほっとする。川を渡るとすぐ長靴に水がはいった。「最初に濡れてしまうと気が楽ですよ」となんだか見透かされているみたいだ。

沢をどんどんいくとまるでボルネオの森のようだ、木の根やつるにつかまりつついくとこんどは「ハブが枝やつるに化けてますから気を付けて」にぎょっとする。現れた滝はたしかに堂々たるもので、ものすごい水量、最上部は太い1本なのが途中から岩に当たって「われてくだけてさけてちるかも」なのであった。

1時に空港へ。2時半に鹿児島へ。空港近くで前から泊まってみたかった妙見温泉石原荘へ。もてなし、建築や置いてあるもののセンス、行き届き方、食事、かけ流しの泉質、そしてお値段、どれも申し分なし。これまたキュレーターとして全世界の宿を知っているユカさんと宿の「ベストファイブを書き換えなくちゃね」といいつつ黒麴の焼酎を飲んだ。