震災日録 5月15日

桜井さんの話は面白くて、いかに東北や関東は東京に人材を送っていたかに花が咲いた。「うちは15坪の長屋に山形出身の女中さんがいた」「うちは千葉だったな、婆さんなんて口悪いから茨城巡査に千葉女中なんて言ってた」「たしかに森鷗外の家でもだいだい女中さんは安房から来ていたようで、たぶん口入れ屋が上野辺りにあったのだと思う。鷗外が大原に鷗荘を持ったのはその関係もあるのかも知れない」

「うちの女中さんは不義密通して帰された。そのとき、だれかが『まっつぐけえんなよ』といったのが忘れられない。風呂敷包みを持ってとぼとぼ帰るまっすぐな道が見えるような気がしてさ」「うちの隣りは茨城巡査でさ、僕が会社に入って浅草署に行ったら、偉くなってた。おじさんここでなにしてんの、と聞いたら『知能犯の担当だ』って胸を張った。浅草署の副署長だと言って食い逃げしたやつを捕まえたとか言ってた」「たしかに昔は警察の人というと下町ではただ飯食ってたもんね。うちの患者にも警察の人がいてよく貰い物だと言ってバナナとか持ってきてくれたもん」

今朝、北上の熊谷さんがきた。「森さん、河北新報見ましたか? 名取市の役場職員の4月の残業代が1億6000万、職員ひとり当たり、30万というんですよ。市長が半分にしてと言ったら組合が反対。だってこの非常時に住民は一銭ももらわないで不眠不休なのに、何いってんですか? 自衛隊だって来なくていいのに来て渋滞は起こすし、特別手当出てるんですよ。日本赤十字なんてみんな皇族とか担いで、集まった義援金で日経新聞に大きな広告出して、まったく義援金は配らないで、自分たちは残業代とっているんですよ。官僚だって同じですよ。この国は官僚と公務員に食い殺されますよ」

「大川小学校なんて人災ですよ。みんなかばっているけど、校長は休みとっていなかったし、マニュアル通りの対応で、よその子も連れて帰ろうとしたら親か祖父母にしか渡せないとか、学校が避難所だからここにいれば大丈夫とか、臨機応変な判断ができなくて、その無能を攻めないでNHKなんかもいつまでもお涙ちょうだいのニュースばっかりやっているんですからねえ。公立の学校はもう駄目ですね」

ヤマサキが母子家庭で一生懸命東京で働いても20万は稼げないのに、ヤマサキの義母は100歳で高知市役所職員の妻というだけで毎月遺族年金が20万出る。やっぱりこの国はおかしい。天下りだってあれだけしつこく書いてもまったく改善されないのはどういうことか?