震災日録 5月7日 電気漬けの暮らし

1日たまった仕事。渋谷の反原発デモに行きたかったが、おそらく拡声器で大音響だと思いやめる。原田病で耳鳴りがするので、ひとの多すぎるところやマイク音は無理。反原発をいうなら電気を使うのはやめたらいいのに(たとえ電池でも)。この前もせまい部屋で集会が行われたのに、具合の悪い入ったり入らなかったりする、しかも雑音の入るマイクがつかわれた。質問のさいマイクをまわすのにも時間がかかるし。

肉声の美しさ。マイクなしで話した方がずっと心にしみる。

それにしてもいかに電気に頼った暮らしをしているのか。大学病院に予約の電話をかけても行政に問い合わせの電話をかけてもずっと待たされる間、ずっと待機メロディが流されている。くりかえしグリーンスリーブスとかを聞かされるのはつらい。ANAの予約などもつながるまでずっと同じメロディで頭にこびりついてしまう。

トイレに入ると音姫とかいう消音器がついているが、おしっこの流れる音は気持ちいいのに、なんであんな人工的な流水温を流さなければいけないんだろう。

ドアを開けると便器のふたがあき、流水音がし、離れると自動で洗浄され、洗面で手を出すと自動で洗剤が出、水が洗ってくれる。拭かなくても手をかざせばすごい音響で温風が噴き出す。「衛生的」のかけ声のもと、これだけの設備がなされ、企業はもうかる。全自動で末端神経を使わなくなってわれわれの世代は早くボケるだろう。

母のところへ富山のカニやホタルイカを持って行った。うちでは見られないテレビをリモコンでつけようとすると、つかない。「待機電力がもったいないから、コンセントを抜いてるのよ。これで今月いくら電気料金が下がるか楽しみ」と母はいった。3月11日以来、暖房も全くしていないという。「夏はクーラーが使えないだろうから、自然にあわせてみてるの」「避難所に行って暮らせるかどうか、ここで試してみた。たたみにぼんやり坐って一食おにぎり一個でやってみたら、すぐ低血糖でふらふら」だって。