震災日録 4月21日

今日は面川さんのお米、今日は大内さんのお米、今日はサトコが座間で作って居るお米、今日は鳴子の米プロジェクトのお米と毎日炊く米が変わるのでヒロシは「うちッて米の品評会場?」と驚いている。どれもおいしいよ。前は「なんで私だけ、仕事もして子育てもして家事もしなくちゃならないの?」と腹を立てていたが、いまは家族のために料理するのがなんだか幸福に思える。避難所にいる人々はそんな平凡な日常すら剥奪されているのだ。

自分の畑からとって来た最後のジャガイモがなくなった。このところ備蓄食糧はあらかた食べ尽くした。家に買ったまま忘れているまめやキクラゲやゴマや唐辛子やウーメンやこんぶがこんなにあったのはびっくり。行った先でお金を落とそうと買ったものもあるけど、それにしても始末が悪い。
白山に安い八百屋ができてすごい人だ。産地はそれぞれ銘記してあるが、中国産野菜もずいぶん置いてあるし、どれだけ新鮮で安全かよくわからず。私の畑は無農薬無肥料だったから抜いて泥さえおとせばそのままかじれた。あれもしあわせのひとつだった。

東北で仕入れて来た米、酒、こんぶ、若布、味噌をどう売るか。これも意外に大変。たとえば農家にしてみれば、5キロでも2キロでも袋詰めの手間は同じなので、5キロが主流である。しかし東京で一人暮らしだと米の2キロ買いが普通。5キロの米を運ぶには少なくとも自転車がいる。農家はたいてい自家精米機があるから玄米で売るのがあたりまえ。しかし東京で自宅に精米機を持っているひとは少ない(うちにはあるけど)。だから白米で仕入れて来たのだけど、白米はそう鮮度が持たないので早く売らなくてはならない。

米は現地で5キロ2500円で仕入れた。これは土からつくった無農薬米だから安い。安全な食品を流通させる会などでは4000円クラスのお米。しかし東京では5キロ1800円くらいの米も出回っているので、高く感じるひともいるだろう。なおかつ2500円で売ると、ガソリン代、高速代、レンタカー代などは足が出る。これは行きの別のミッションのためのものだからいいとして、買って来た米をおろし、自宅まで上げ、またおろしの手間が大変だった。ものを売ろうとすればこういう労力や倉庫代のことも考えなくてはいけないのだな。とにかく今回はヤマサキ、安田邸、光源寺、はてなさんなどの協力でどうにか売り切ることができそう。わかめとこんぶは飛ぶように売れたらしい。ありがとう。

明治学院大学の連続講座で荒川さんが「ドキュメント・チェルノブイリ」を上映するので行く。そのあと平和研究所で震災と原発を記録するチームを立ち上げる。そこで角田の米農家面川さんの息子常義くんがいっていた。「東京では原発のことばかり騒いでいる。被災地では生きるだけでぎりぎりなのに。とっても違和感がある」と。私のところにも「原発に近い所ではみなどんなマスクをしていますか」と聞いたひとがいた。瓦礫処理する自衛隊員はもちろん防塵マスクをしているが、南相馬や新地でも住民はマスクなどほとんどしていなかった。それどころではないのだ。面川さんはことしも作付けをするそうだ。「海沿いの田んぼが全部やられたのに角田で米をつくらなかったら宮城は食べる米がなくなる、と父はいっています」と面川くん。正しい判断だと思う。