朝早くから区議選の候補者が回ってくる。「未来を作る子供たちのためにがんばります」「安全で安心な暮らしのために精一杯はたらきます」。内容のない空疎なことを拡声器でがなりたてている。
東京駅の古材のスレート瓦を引受けた熊谷産業社長熊谷秋雄さんはクマちゃんと呼ばれている。ほんとテディベアそっくり。でも私もクマちゃんと呼ばれているので兄弟かも。
彼とは10年以上前に一諸にイギリスの茅葺き屋根やナショナルトラストを観に行った。その頃彼は30代だったはず。ものすごく口が悪くて「森さんは運動は上手だが文章は下手」とかね。絵本とマンガを宮城に届けにいった、と言ったら「まさか、森さんの本じゃないでしょうね」。抗議すると「本当のことをいうひとが必要ですよ」と口が減らない。トラストの山本玲子さんも工学院の後藤治さんもイギリスには一緒だった。クマちゃんは民俗研究家・結城登美雄さんとも親しいし、いろんなネットワークが今日のためにできていたようなのだ。
JR東日本にいったとき、「重要文化財と言っても工事はうちがすべて費用を出している。補助金などは一切もらっていない」といわれた。暗に「私企業が独自でやる工事に差し出がましいことを言うな」ということらしい。石巻の現場に視察に来た時も瓦寄進などイベントはやめてほしい、と言ったとか。しかし東京駅が建った時は国有鉄道だったし、東京駅も国の財産だったはず。一等地をどでんと占有して南北行き来のじゃましているのも公共的存在なので許されているはず。しかも駅舎保存は丸の内の他のビルに容積率を移転して、つまり元国有地の空中権を売っぱらって駅舎保存の建設費を出しているんではないか。駅とは公共材、コモンズのひとつでしょうに?
NTTも千駄木の本来国有地であったところにマンションを建てて売り飛ばしているし、駅前には密集市街地に巨大情報サーバービルを建設中だし、ほんとうに民営化って何だったのだろう。井上ひさしさんがご存命あったらなんておっしゃるだろう。
NTTについても東京電力とおなじ大スポンサーのため、マスコミは東京新聞をのぞいて報道していない。東京新聞、原発についてもよくやっているな。
東京新聞(4月16日)は駅舎を「復興のシンボルに」と書いたあと、デスクメモで「『ご利用のお客さまにはご不便、ご迷惑をおかけしております』。JR東日本のホームページは慇懃無礼だ。地震や計画停電で客を駅から閉め出し、振替輸送も定期券の2割払い戻し(五日未満)もしない。『なにとぞご理解、ご協力をお願い申し上げます』という前に、誠意を見せてほしい」と書いている。
正論だ。11日には早々に終日運休を決め、コンコースも閉じてしまった。都営地下鉄が一番復旧が早かったと覚えている。
コンコースをはききよめ、寝袋を配って、帰宅困難者をお世話するくらいのことはやるべきだった。インドの駅構内なんて巡礼者に開放してみんな床に寝てますよ!
都市ジャーナリストから来たメール。
「私は14~15日に仙台からいわき市まで行ってきましたが、JRは常磐線のいわき-仙台間が完全復旧するのを断念すると推察します。
三陸沿岸の不採算路線も同様です。
こうした社会的責任に背を向けるJRに対して、募金で支えるより、姿勢を改めさせることが優先すべきだと思います」
全国の鉄道ファンよ、いまこそ動いてください。絶景路線ももう絶景が見られなくなるかも!