今?夏風邪。私はクーラーが嫌い、だけど飛行機、地下鉄、レストラン、どこでもクーラーでガンガン冷やす。免疫力もなかったんだろうな。喉の痛みから鼻水、咳、熱、すべての症状で揃いました。これもうつるといけないので、99パーセント飛沫のカットするマスクをかけ、できるだけ家にいます。大好きなお医者さんは「さっぱりしたものを食べ、果物と野菜を取り、よく寝ることですね」と睡眠薬をくれました。あらら、いろんなことが気になって大体5時間睡眠なのに、今日は8時間以上寝られました。
あとは頭の上のひよめきに保冷剤を手ぬぐいで縛り、通風のいい麻の服を着て、お酒はやめて、夜は軽く。揚げの薄味煮、冷奴、冷やし中華、お中元にもらったゼリー、冷やし味噌汁などが美味しいです。もう今年出すべき本は皆出たし、あとは遊んで暮らします。
「五足の靴をゆく」(平凡社・1600円)は明治40年に北原白秋や木下杢太郎ら20そこそこの青年たちが天草や島原、長崎を旅した記録で、彼らはキリシタン、バテレンなどという言葉に惹かれ、南蛮文学を起こしていくきっかけになったのでした。潜伏キリシタン遺跡が世界遺産になったこの夏、消夏のための読書にオススメします。
「お隣のイスラーム」(紀伊国屋書店・1700円)は東京近郊に住むムスリムの人々に谷根千流インタビューを試みたもので、まあ、イスラムといってもサウジの王様から、放浪のクルドの民、中国支配下のウィグル人まで、様々な人がいるものです。これはなぜか書評がたくさん出ています。
「イタリアの小さな村へーーアルベルゴ・ディフーゾのおもてなし」(新潮社トンボの本・1600円)
中橋恵さんとイタリアの「街全体が良くなる宿」を取材してきました。「観光化しても一部の店にしかお金が落ちないし、うるさくなるだけじゃないか」という批判を長らく谷根千で聞かされていましたので、どうしたら地域を乱さない観光、住民と観光客が共存できる仕掛けはないのか、それを探したつもりです。
「東京老舗ご飯20大正編」(ポプラ文庫・620円)これは大変でした。大正は15年しかなくて、大正創業の店を探し新たに20軒も取材し直し、とても時間がかかりました。私の軽い財布で行けるところを中心にしたつもりです。
今酒屋も米屋も本屋も和菓子屋も魚屋も肉屋もおもちゃ屋もボタンやも街から消えていきます。セブンイレブンが店頭で生ビールを売るなんてなんという規制緩和でしょう。そのために町の酒屋は消えてしまいました。出版という産業も今その運命に向かいつつあるのかもしれません。活版本から作ってきた私は、その後の写植、ワープロを経てパソコン時代まで40年以上見てその変化に立ち往生しています。
図書館でもいいですし、買って回し読みだともっとありがたいです。ぜひ、何年もかけた労作をお読みくださいませ。
おかげさまで去年出した
「暗い時代の人々」(亜紀書房・1700円)斎藤隆夫、山本宣治から京都のリベルタンたちの「土曜日」まで、暗い時代を挫けることなく生き抜いた人々のポルトレ。紀伊国屋人文大賞18位
「子規の音」(新潮社・2100円)根岸で貧しい人の側に身を寄せていきた正岡子規の評伝。根岸・谷根千という地域から、身体の自由を奪われた病者子規が研ぎ澄まされた五感で捉えた、ことに音に注目した伝記です。
両方とも4刷りになりました。珍しいことです。こちらも合わせてお読みくだされば嬉しいです。