6月4日

これまた気になっていた『安井かずみとその時代』を読む。著者の名は女性雑誌などでよく目にしていた。安井かずみの訳詞や歌詞はいいと思う。阿久悠のようなあざとさがなくて、切れ味もないが、普通できれいだ。のんびりしたあの時代を思い出す。
「私の城下町」のように「四季の草花が咲き乱れる」ことはないだろうし、
「レンゲの華を枕に眠る」と花はつぶれちゃうだろうし、矛盾だらけの歌詞を平気で書いていた。
しかし若くして印税が入り、ベンツを乗り回し、サンローランをきて、キャンティで夜ごと騒ぎまくるという彼女の人生の路線に私は一ミリもかめない。まったく興味がない。女の意地悪なところはなかった、と何人もが証言している。横浜のいいうちに生まれたお嬢さんだったのだろうが、美意識を振りかざす人ってどうも苦手。それはあなたの主観でしょう、ですみそうなことが多い。時代のロールモデルになり,完璧なカップルを演じていた安井かずみの内面の空虚がどんどん分析されていくのかと思ったら最後、渡辺美佐がでて来て、「あれはあれで幸せだったのよ」的な予定調和で終わってしまった。川口アパートから引っ越すところ、六本木の家のインテリア、かずみの死後一年もたたない加藤和彦の再婚と離婚、そして自死など、繰り返しが多い。でもあっという間に読んだからこの本、おもしろいのはたしかである。