11月12日

八っ場ダム二日め。山木館のご主人にもインタビューを申し込んだが「あんたたちに話す言葉は一言もない」と一蹴されてしまい、泊まり客にずいぶんなことをいうなあとは思ったが、奥さんのなんとも言えないお顔を見て宿を出た。それだけ長い間につもった住民の怒りや下流都県民への不信は強い。
沖縄に行っても思うことだが、理解しようと思い、なにか自分にできることはないかと思い、出かけてゆく人にたいし、「あんた等の無関心が私たちの苦しみを生んでいるのよ」などと罵倒するのは戦術としては稚拙だとおもう。私も何度も罵倒されたが、その地の人びとの受苦を思えば居心地のよい書斎でリベラルな机上の空論を書いてすむものではない。そう思ってこりずに出かけてゆく。
つぎに豊田牛乳さんに行くと、こちらはインタビューの録画、公開もOKだとのこと。業種がちがうし、お仕事も順調、後継者にも恵まれ、ダムをちがう視点で考えている。もともとダムにはなんの期待もしていなかった。政権交代で馬鹿げた不必要な計画が止まるなら元通りだしなんにも困らない、とのこと。それでも地元でダム不賛成を言うこと自体、かなり抵抗があることらしく、途中でお母さまが心配して出ていらした。とにかく進んでいる工事、余りの自然の改変、ダメージに言葉がない。公共工事とその業者に天下った官僚によって生態系へつけられた傷はもとに戻らないだろう。