震災日録 11月22日 パブコメのあやしさ

明日のアーサー・ビナードさんの八ッ場ダムの講演のためにサトコは寝ずに準備。タイトルは「ダムの一つ覚え」。うまいねえ。
11月4日締切りの国土交通省のパブリックコメント受付には5963通来たそうだが、3日現在で130通だったのに、ほとんどが締切りぎりぎりにどっとどいた事業続行に賛成意見らしい。
毎日新聞の樋岡徹也記者は「関東地整によると、パブリックコメントには10月6日~11月4日に延べ5963人から意見が寄せられ、学識者や住民からも意見を聞いた。賛否両論だったものの、「ダムの必要性を否定するほど大きな問題はなかった」と判断したという」(11月21日)ですましているが、これこそ発表ジャーナリズムというのじゃないの? 読売は「その後、この評価について、国民からの意見を募る「パブリックコメント」を実施。流域住民や学識経験者から見解も聴取し、建設継続が妥当と結論付けた」でおしまい。もっとひどい。朝日は「関係住民からの意見聴取やパブリックコメント(国民の意見)には反対意見もあったが、検証結果を優先させた」うーむ、苦肉の表現ですな。
自分の意見や分析がない。どっと届いた意見はもしかしてヤラセでないか、とかどうして疑ってみないのだろう。私も事業継続反対の意見をパブコメで送ったが、「今回の(事業継続が妥当という)方針は関係住民や学識経験者からの意見聴取、パブリックコメントを踏まえ判断した」(下野新聞11・21)だとすると、私の意見は少数派として抹殺されたものだろう。「踏まえ」のアリバイに使われたことになるのかしら。
「幹事会に出席した1都5県の出席者からは『継続は当然の結果。検証に費やした2年を取り戻すため、予算を集中投下して15年度の完成に間に合わせてほしい』(埼玉県)、『ダムが完成しなければ利根川の沿線市町村は洪水に対する不安を払拭できない。ただ、整備の際はさらなるコスト縮減が必要』(千葉県)、『資料では入札から契約まで9カ月必要とある。事業化へさらにスピードアップしてほしい』(東京都)と発言し、早期事業化や予算の重点配分、コスト削減などを要望した」(日刊建設新聞、11・22)と関東の知事とその子分はみんなつくれつくれの大合唱。
県議・都議には反対の人も多いのに。たとえば、
「出席した県内選出議員は石関貴史、中島政希、三宅雪子、宮崎岳志の四氏。三宅氏は『みんな中止の意見。火山や地震の専門家による検証を加えるべきだとの意見があった』と語った。宮崎氏は『私はダム本体工事に反対だが、中止、建設のいずれにせよ大臣の一声で決めるのはいけない。公開の議論を積み重ねるべきだ』と主張。中島氏は関東地方整備局がダム案をコスト面で最も有利とした点について『事業費は必ず膨れ上がる。低く見積もりすぎだ』と指摘した」(東京新聞、11・19)
有識者会議だって
「群馬大大学院の清水義彦教授(河川工学)は『(八ッ場ダム事業で)これまで地域社会にどんな影響があったかを盛り込み、代替案と比較すべきだ』と注文。埼玉大大学院の佐々木寧教授(植物生態学)は『地滑りや地震が起きたり、希少生物が見つかったり突発的なことがあると予算は膨らむが環境面では大ざっぱな議論しかしていない』と指摘した。東京新聞特別報道部の野呂法夫氏は、東京都など利水参画者が実態と異なる水需給計画を提出しているとし『きちんとデータとして見せないと報告書として未完だ』と指摘。上毛新聞論説委員の小林忍氏は『(ダム建設への)異論に対して説明しないと将来、禍根を残す』と述べ、ほかの出席者からも『反対派と議論がかみ合っていない』との指摘が相次いだ」(東京新聞、11・5)
さすが東京新聞。これだけパブコメにも有識者会議にもいろんな意見があるのに、「踏まえてゴー」とは何事だ。
そもそも民主党のマニフェストはどうしたのだ。官僚に巻き返されて情けないな。あとで移転地の地すべりとか、ダムの早期堆積とか、想定外の事故が起こったら国土交通省と今の知事連には責任をとってもらいたい。大公共事業と官僚天下りのために日本の美しい山河をずたずたにしてなんで右翼も怒らないのか。これだけ国債を発行して無駄なものばかり作って次世代にツケを押しつけているのに、なんで若者たちはもっと怒らないのか。わからない。