震災日録 8月28日 地質と文学

伊藤谷生さんより。

「地質学において巡検(excursion:地質学的に重要な地域や露頭を見学し、参加者で議論する)いうものがあり、その案内書の一つを今夏も書いたのですが、その際、『即興詩人のイタリア旅行』の地質版を作ろうと思ったものです。旅と地質と文学は大きな関係があります。不勉強な私ですが、いくつか挙げてみましょう。

泉鏡花『高野聖』:あのルートは跡津川断層という活断層にそった山道です。

なんとかという妖艶な美女が住む天生峠には立派な断層露頭があります。今も昔も蛭が多くて大変ですが。

田宮虎彦『足摺岬』:ここは巨大なかこう岩の貫入場所です。いい教材です。

四国や紀伊半島のお札巡りは中央構造線沿いが多いですね。

北原白秋の『城ヶ島の雨』:彼が桐の花事件で三崎に逃れてきた時、まだ関東大地震の前でしたので、“通り矢”は海峡でした。大震災で三浦半島が相当隆起してしまったのですが、隆起前だったからあの詩が書けたのか も知れません。

大岡昇平『武蔵野夫人』:恋ヶ窪を含めてハケは国分寺崖線という多摩川の扇状地の南西縁からの湧水。

金石範『火山島』:これはまさに地質そのものです。

太宰治の『津軽』にそって歩けば津軽の地質がよくわかりますし、スタインベックの『怒りの葡萄』にあるルート66に沿って車を 走らせれば、北米の地質の概要がつかめます」

私一人で独占するのはもったいないので、紹介させていただきました。

夜は光源寺で東北支援復興盆踊り。町会もテントをはっているが、ここが児童遊園でもあり、子育て中のお母さんたちにも場を提供しているためか、すっかり子連れ親子のたまり場になっている。若い世代に支持されているお寺は安泰だと思う。