私は沖縄より奄美の方が静かで好き。で、カケロマでのんびりしよう、という誘いに乗って出かけた。台風で飛行機が飛ぶか心配だったが、東京は雨、ついた奄美は台風一過の快晴。ばしゃ山村でリーフの海を眺めながら鶏飯を食べ、南海岸沿いに南下する。途中、台風により道は折れ枝だらけ、あちこちで崖崩れ。古仁屋から生間へ、でいご丸で渡る。寅さんシリーズに登場する船長だった。船の中に田中邦衛さんや山田洋次監督の色紙が貼ってある。前にきた時は夕方の海上タクシーで「マリンブルーかけろま」にとまった。暮れ行く海をいつまでも眺めつづけて大満足だったが、翌朝、帰らなくてはならず、バイトの大阪人の兄ちゃんが「着てすぐ帰るなら来るんやない」と言ったのがはらがたった。人にはそれぞれの都合と事情があるんだから、十数時間の充実した滞在をけなすこともないのに。
今日の宿は同行のスズキさんの友人嘉野仁さんが経営する野見山、これで「のみしゃん」とよむ。お母さんのちえちゃんと2人、まさに「飲みしゃん」。仁さんは前の海で穫れたトコブシやシッタカ、トビンニャという不思議な貝を出してくれ、貝好きの私はこれでビール。そのうち山で穫った猪の肉を炭火で焼いてくれた。家も自力建設。2階はまさにバラック(兵舎)のようだが、海が見え、なんとも気持ちいい。お風呂も自分でこさえた五右衛門風呂だった。1階にはカウンターの居酒屋もあり、カラオケもできるのだ。「昔は前の堤防がなかったんでもっと景色が良かった。堤防かくしのためにアダンを植えたの」。それがいい景色だ。