震災日誌 4月13日

がんばる、という言葉は嫌いではない。頑張る、よりもっと好きなのは頬張る、かな。おいしいサンドイッチとかさ。でも「がんばれ東北」や「がんばろう、いわき」とあちこちで見かけると食傷気味。「もうこれ以上がんばれないよ」という人には「がんばらなくていいよ」といったほうがいいという。でも「がんばれ」も自粛したくはない。最近、がんばれそうな人には電話を切るとき「いっしょにがんばりましょう」といったり、それ以外の人には「お体お大事にね」といったりする。「踏ん張れ」とか「けっぱれ」もいいかな。

実は東京駅のスレート屋根の反響で忙殺されているのだが、それより以前、16日から18日まで東北に行くことにしていた。それは東京でほとんど報道されていない、福島北部から宮城南部の海沿いの町町へ絵本とマンガを届けにいくプロジェクトだ。

これは集英社の私の文庫を作ってくれている瀧川さんが「仙台にジャンプが一冊しか入らなくて150人ならんでる」というニュースに心を痛め、ジャンプを東北に持って行って届けたい、というきわめてシンプルな希望から始まった。

そこで親しい編集者たちに呼びかけたところ、ポプラ社の倉沢紀久子さんは「児童書ではないけど、避難所で読める気軽な小説とかエッセイ」を、平凡社の山本明子さんは「ちょうど別冊太陽で資料本で集めた絵本があるので」、佐川祥子さんは「福音館の勝尾さんと相談して子どもの本など」,朝日新聞出版の岩田一平さんは「科学読み物を送ります」、JTBの河合桃子さんは「旅行関係の楽しい本を一箱」,ヤマサキの息子メディアファクトリーの山﨑旬くんからも、亜紀書房の足立恵美さんからも、協力のメール。岩波の平田賢一さん経由で児童図書部の熊倉沙希子さんからも仲間で集めます、といってくれた。みな個人的な努力である。ありがたい。

社として、業界としてはそのうち大きな取り組みをされると思うが、できるだけ早く届けたい。同じ児童書でもマンガと学参と絵本と科学読み物では編集もまるでちがう仕事だと思うが、子どもに早く落ち着いた読書環境をという思いは同じだ。「ジャンプが届いたら、さぞうれしいでしょうね。毎週ジャンプを読んでいた子にとっては、ジャンプは平和な日常を象徴する、心安らぐものだと思います」という熊倉さんのメールはみんなの思いである。すでに避難所に読み聞かせなどにはいっている方々もいる。マレーシアから来た方は「どこへいってもお年寄りが話しかけてくる。みんなつらい話、経験したこと、これからのことを聞いて欲しがっている」という。そのうちお年寄りの話し相手になりにいきたい。今回は16日から18日の3日間の予定で、石巻の東京駅の屋根の現況も見てこなければならない。できれば女川原発周辺の方のはなしも聞きたい、いやいや欲張りすぎて虻蜂取らずにならないように。

地震以来、やけに白髪が増えた。むかし旧満州にいて、ソ連の兵士が家に入ってきたとたん髪の毛が逆立って、翌日全部白髪になった、と望月百合子さんに聞いたが、そんな感じかな。