2月11日

建国記念日。昔の明治節。5時から蔵で研究会を始める。映像ドキュメントの桜井さんがつないだフィルムを見て話し合う。一本はリゾート法の二十五年を検証したもの。もう一本は山田洋次監督「家族」を背景に、1970年頃の日本列島を振り返るドキュメント抄。伊王島の炭坑が廃坑になって生活が立ち行かなくなった夫が倍賞千恵子の妻と笠智衆の父を連れて、新天地北海道へ酪農をしに一家で日本列島を横断するロードムービー。リアルタイムで見た時、なんで赤ん坊を万博なんかに連れて行ってミスミスしなせちゃうの、と頭にきた。お父さんも旅の疲れか、北海道についてまもなく死ぬ。最後は牛の子が産まれるハッピーエンドになっているが、国策に追われて家族を二人も失う悲惨な話。そこに桜井さんが炭鉱事故、福山コンビナート、大阪万博、四日市の公害、東北の出稼ぎ、酪農の大変さ、八郎潟干拓中止などの象徴的なドキュメンタリーを差し込んでみせてくれて、高度経済成長の影が際立った。
それにしても万博、高校の級友たちはみんな行ったが、私はもうばかばかしくて行かなかった。バッファロー作戦とか言う入場制限、だけど入場してしまった人々は実に明るい目をしてお目当てのパビリオン(わ、なつかしいことばだわ)に一目散に駆けて行くのだ。庶民というものはどんなに為政者に騙されてもあきらめずに駆けて行くものだなあ。無自覚と言うか、忘れっぽいというのか、鈍い分したたかというのか。団体旅行で万博に来て、「これで大東和戦争の仇が取れた」みたいなことをいい機嫌で語る親父なんか、まさにそんなかんじ。
とにかく蔵は寒く、荒川さんちで鍋。この研究会は町のアーカイブとして何を残すか、がテーマなので当分、一般公開はしない予定。もう人を楽しませるためにイベントをやることには疲れていまった。参加し、フィルムの編集とか、何か寄与してくれる人だけを募集中。