6月11日 

家にいてラジオ出演。こんなのを書いてみた。

「国立競技場を壊さない10の理由

1、IOCのアジェンダ21を遵守する

IOCは開催都市に、リオの環境サミットをふまえ、環境を守るために1999年に制定された「オリンピックムーブメンツ・アジェンダ21」を遵守することを求めています。

そこには、「既存施設を修理しても使用できない場合に限り、新しくスポーツ施設を建造することができる」(3.2.2)とあります。すでにJSCが久米設計に依頼した改修計画報告は777億円で改修可能という報告が出ています。トイレ、エレベーター、レストラン、バリアフリー施設の付加もできます。これに従って改修しましょう。

2 都心の緑を守る

アジェンダ21は「環境保全地域、地方、文化遺産と天然資源など全体を保護しなければならない」(3、2、3)と述べています。また「新規施設は・・廻りの自然や景観を損なうことなく設計されなければならない」とも述べています。神宮外苑の緑は、明治天皇の葬儀が行われた場所に、なくなった後も天から人々がスポーツを楽しむ姿を見たい、という趣旨で、1926年に作られた洋風庭園です。まさに「sports for all」。本多静六など林学者らが協力討議し人工林ながら現在の森が育っています。IOCに従い、緑地と公園を守りましょう。

3、文化財のバッファゾーンを守る

上記「廻りの自然や景観を損なわない」というIOCの求めに応じ、重要文化財聖徳絵画記念館を正面に見るバロック的景観、歴史的文脈を守るのは当然のことです。文化財のバッファゾーンはイギリス、ドイツ、フランスなどの先進国では特に守ることを義務づけられています。アジェンダ21は「競技施設は、土地利用計画に従って、自然か人口かを問わず、地域状況に調和してとけ込むように建築、改装されるべきである」(3.1.6)と述べてもいます。また施設は「地域にある制限条項に従わなければならない」ともいっており、オリンピック招致時には15メートルの風致地区、20メートルの高度地区がかけられていたこの土地の制限条項を守りましょう。さしたる論議もないまま、高さ制限を変えた都計審は自らの過ちを反省し、元に戻さねばなりません。

4、市民生活を楽しく

毎日、神宮外苑でジョギングや散歩、おしゃべりや憩いのひとときを過ごす人々の幸福権、隣接する都営霞ヶ丘団地の人々の居住権は日本国憲法が保証しています。「すべての個人が、尊厳を持って生活し、それぞれが属する社会で積極的に役割を果たすためには欠かせない文化的、物質的なニーズが満たされなければ、持続可能な発展は考えられない」というアジェンダ21を遵守すべきです(3・1)。

また「宿命的少数派や社会で最も恵まれないメンバーに、特に注意を払わなければならない」(同)と述べていますので、オリンピックを口実に路上生活者を排除しないということも、当然のことです。

5、われわれの聖地を大事にする

1958年のアジア大会のために建てられ、64年の東京オリンピックに改修された現在のスタジアムは、聖火台、壁画、織田ポールも含め、戦後の復興を果たした日本国民のシンボルであり、その後もサッカーの数々の名勝負が行われました。1936年完成のベルリンのオリンピックスタジアムを大事に継承しているように、レガシーとして継承するのは国民の義務です。形状も似た初代の競技場の学徒動員の記憶もそれには重なってくるでしょう。改修して使ったのちは、しかるべき文化財指定と活用が望まれます。

6、環境に配慮する

アジェンダ21は競技場の素材、廃棄物などについても環境保護を優先させています。

屋根材には使えない化学物質による膜を使うことはできません。また有限な資源を考慮するならば、自然エネルギー由来ではない電気仕掛けの可動椅子、開閉屋根、屋根があるために必要な空調、雪に耐えられないための融雪装置などを装備して電気を多用するのは、原発事故を起した国として慎まねばなりません。

7、持続可能な開発を

現行案では365日のうち40日くらいしか使うアテがありません。アジェンダが掲げる「持続可能な発展」のためには、巨額な建設費、維持費、改修費は避けなければなりません。未来の世代に対してツケとなります。ライフサイクルコスト、ファシリティマネジメントの観点からも精査しなければなりません。そうしないと、北京の鳥の巣はじめたくさんのスタジアムがたどったと同じ運命、「ホワイトエレファント」になってしまいます。

8、使い道をよく考えよう

招致に酔い、とにかくワールドカップやオリンピックに使えればよい、というのでは無責任です。将来どう使うのか。国税で大イヴェント会場を作るのは論外です。ビジネスのための場所は興行者が独自にお考え下さい。サッカー、ラグビー、陸上、その観客数、使用料、近隣スタとの競合なども精査し、一番効果的な道を探りましょう。ラグビーの試合はガラガラ、陸上には高くて借りられないなどのことがないように。IOCはおおむね6万以上を要求しており、8万のスタは招致都市が勝手に公約し、国会で決議しただけのまやかしの数字です。ロンドンのように仮設にしてダウンサイズする、仮設部分は後で外して東北の津波避難タワーにするなどの知恵を絞りましょう。

9、環境アセスをしっかりやろう

都はIOCの求めにより、環境アセスが義務づけられており、「環境負荷の最小化、自然と共生する都市計画、スポーツを通じた持続可能な環境づくり」というすばらしい目標を掲げています。そのまま実現してもらいましょう。これが形骸化した「環境アワスメント」にならないよう、委員会だけでなく市民が監視する必要があります。

10、ステークホルダーはパートナーである

都の「2020年東京オリンピック・パラリンピック環境ガイドライン」では「NGO、地域団体、公的機関、有識者、民間セクターとの協力・対話を行い……レガシーにつながる戦略の実施」を呼びかけています。今まで新国立競技場計画は秘密主義で進められてきましたが、これを改め、ステークホルダーをパートナーとして位置づけ、協力協働してこそ、2020年のオリンピック・パラリンピックは祝福されるでしょう」

縮小時代、成熟社会にふさわしいオリンピックを。

運動用とは別に、きれいなシンポのチラシもできました。

環境シンポジウムチラシ