鴎外記念館で「雁」の映画会。森鴎外の名作。明治13年のことと覚えている、とはじまる。映画では飴細工やの老人の娘お玉が高利貸しの末蔵に囲われる。お玉が高峰秀子、イメージよりは相当豊満、はかなげではなく、すらりとはしているが肉感的。鼻も高いし、目も大きい。高利貸しは東野英治郎、肌の汚い、小柄な男で、ハンチング帽をかぶって鳶を来ている。囲うのは無縁坂のセット、しかしこんな目に立つ人通りの多いところによくぞ。その上入り口も素通しで窓からなかも丸見え。
手に職もなく、男にすがって生きるしかない娘の悲しさ、学歴などなくてももっと商売するとか、やりようがあるはずなのに。女中はがさつで怠け者、お隣の仕立物のお師匠さん三宅菊子はそれ者上りのような妖艶美、浦辺久美子のおかみさんはやつれて、芥川宏志と宇野重吉の学生はとうが建っている。雁を石で撃つ原作のシーンはない。とはいえ、なかなか見応えがありました。