台湾の第四原発を命をかけて泊めようとしたドキュメンタリ「こんにちは貢寮」を「谷中の家」に見に行く。建築関係の編集者の西川さん、美術研究家のだんなさんの二人がご自分の家の一階を集まりに貸してくださり、月一原発映画祭を開催してきて地域の名所になった。
2、3日前に自分も会をしたところだから、来て見る方はらくちんだが、主宰する方達のご苦労に改めて感謝。フィルムを借りるのにもお金がかかり、今回申し込みが少ないと聞いて心配していたが、東京新聞に大きく載って満員だった。
女性の映像作家が丁寧に作っている。独裁政権下の台湾で突然自分の地域に原発計画が発表され、驚く人々。必死の反核運動、その中で警官を殺した容疑で捕まった青年(えん罪)、座り込みの最中に焼身自殺をしようとする住民、心痛のあまりつぎつぎなくなるお年寄り、美しい景色を返せ、海辺を返せ、平和な村を返せ。住民の願いは全うなのに、国会では圧倒的多数で原発建設は支持される。
日本の自民党のような国民党の長期政権のもと、住民の願いは国の政策に届かない。日本にそっくり、例えば口当たりよく子育て環境の充実を訴える丸川珠代は原発再稼働賛成の一票をとうじるし、憲法改「正」賛成の一票をとうじるはず。
だまされる有権者も馬鹿、選挙制度もインチキ。町には清潔で毅然と生きている人が多いのに、麻生副総理をみてもどの国も上へ行くほど低レベルで腐っている。
台湾も同様だ。えん罪で捕まった青年が11年ののち、ふるさとに外出を許される。このときの挨拶に、この青年のこころのきれいさが表れる。運動の犠牲になって、と謝る住民たちに「皆さんの方が大変、私は獄中で考える時間が持てた」と静かにいう。うろ覚えだけど。原発立地に遺跡が出て、これを原発差し止めの切り札にしようともがく住民、私たちの八ッ場ダム予定地でも遺跡をフィールドミュージアムに、と呼びかけている。のう調停を作ったらさかながいなくなったと嘆く住民。台湾に行って彼らと握手をしてきたいという気分になった。
この日、荒畑寒村研究者だった堀切利高さんのお家で本や資料を見せていただいた。既に何人かの研究者がしかるべきところへもっていった後だったが、荷風や三田村鳶魚、久保田万太郎などの著作を譲っていただくことに。お酒をおいしそうに飲んで、たくさんのことを教えてくれた浅草育ちの堀切さんを偲びながら市川の花火を見た。花火って壮大な無駄ではあるがあれだけの幸福感を与えてくれる。
ややありて再び闇に戻りたる花火のような恋とおもひぬ
今の都会の空は闇に戻らないけど。