『青鞜』の冒険を「こころ」に書く。ちょうど平塚らいてうに奥村博が戻って来て、2人で赤城にいっちゃって、留守番の伊藤野枝が獅子奮迅のところへ、木村荘太からラブレターが来て動揺する。今までのと違い、私は谷根千との比較をしながら雑誌編輯としての『青鞜』を地誌にからませて書いているのだが、なんでも個人的なことを『青鞜』誌上に書いてしまうところはすごいなあ。ひとからきたラブレターも、結婚に当っての伴侶への質問状も、親にあてた独立宣言も。そのうえ、会ってもいないのに妄想で求愛するオトコとか、恋人たちの間に割り込んで俺をないがしろにするならみんなばらすぞと脅迫するオトコとか、大正ってへんなのがおおいなあ、とあきれながら書いた。疲れるたのでヒロシと野池さんにお寿司を食べに行った。そしたら若いころから知っているケンちゃんも立派な旦那さんになられたので、「苗字はなんて仰るの」ときいたのだけど、「『昔通り、ケンちゃんでいいですよ』と言ってくれた。うれしいな。そのあと、ペチコートレーンで甥のヒコベエたちのライブ。窓のそとに谷中を楽しむ人たちが通るのもいい。ここのママ、アキオさんに世話になった若い人はおおいなあ。みんな覚えているよ、いつまでも。