10月8日

半藤末利子『漱石の長襦袢』を読み、書評を書く。鴎外の妻しげが
『パパ、死んじゃいや』と取りすがって、賀古鶴所に見苦しい、と一
喝された話は有名だが、それは後ろ盾を失った未亡人がどれくらい
埒外に置かれるかを知ってのしげの気持ちだろう、と長男の於兎が書いている。

漱石の場合、49でなくなっているから最後に生まれた嫡男もまだ幼く、
結局、小宮豊隆はじめ弟子たちがなんでも取り仕切って行くのを
どれほど夏目家の人々が隠忍自重して見ていたか、がよく伝わって来る。