11月10日

岩波のブックレットに私は執筆せずシンポジウム部分だけに参加した。だから表紙の著者の所に名前がないのはいいとして、まったく肩書きもプロフィールも載せていないのである。これでは誰だかわからないではないか、といったら編集者は「校正段階でかなりあふれていたので載せられなかった、再版から載せます」と言ってきたがどうも気分が良くない。また別のひとから木内昇『漂砂をうたう』には森さんの調べたこと、根津の遊郭や金魚屋の話とかずいぶん使ってあるようだけど参考文献に『不思議の町根津』も谷根千もあがっていないのはおかしいのでは、と聞いた。そういえば連載中編集者が資料を買いにきたっけ。たしかに事実には違いないけれど、長年忘れられていた地域史を掘り起こして日の目を見せたのは私たちだ。司馬遼太郎さんや吉村昭さんは郷土史家を大事に遇し、小説やエッセイの中でも礼を尽くしておられる。最近の作家はこんなものか。まだ本も送ってこないし、気分が悪いから買ってまで読む気はしない。この作家、『茗荷谷の猫』でかなり好感を持っていたのになあ。