2005年に公開された「ALWAYS 三丁目の夕日」は、思う存分に昭和33年を堪能させてくれました。表裏ある世の中の片面だけを描いているにせよ、この温かみのある美しい町並みと人は魅力的。いったい何処、えっ、私の住むここ(東京)なの、というちょっと誇れる気分。上映中にずっと隣席の熟年夫婦が、囁き合い頷き合いながらズーズー泣いていたのを、うるさいけど仕方ないか、と許せる気分にさせてくれたのです。
さて、今回ゲスト連載をお願いした坂口和澄氏の「あれやこれやの思い出帖」、ここにあるのもたしかに、私たちの町の三丁目の夕日です。昭和十年から二十年代の根岸、あるいは谷中、上野桜木。少年が見た町や人、世の中しくみや大人の言い種。
ユーモアにあふれた文章をお楽しみください。
坂口和澄 さかぐちわずみ
不自由業
1934年台東区根岸生まれ。現在上野桜木町に在住。デザイン仕事のかたわら、中国史を研究。著書に「正史三国志群雄銘銘伝」(光人社)、「三国志群雄録」(徳間文庫)などがある。「谷根千」82号に「根岸だより」を寄稿。
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