37 古本番長出たとこ勝負
さて、先日オヨヨ書林さんのことを書いてから(36参照)、全くの偶然で、当のオヨヨ書林さんから吉報が届きました。なんと、前回触れた作家、チェスター・ハイムズの初邦訳作品『ピンク・トウ』(エロ小説)が入荷したので取りに来て下さいと。まだ私の文章が「谷根千ねっと」に載る前でした。いやぁ、まさに古本運。これも前から探していて、いろんな古本屋さんにお願いしてたんですが、こんな偶然が起こるとは・・・・・・。やっぱ、いるんですよね、古本の神様は。出来過ぎた話のようですが、(古本の)神様に誓って、実話です。
と、前フリが終わったところで、今回は千駄木の「古書ほうろう」さんのお話を一席。
今から5〜6年前(違っていたらすんません。30過ぎてから、時間はとてもいい加減に過ぎ去っていくのです)のことでしたか。仕事を終えたんだかなんだか、ともかくヒマを持て余した私は、谷中の墓地を抜けたり戻ったり、デタラメなコースの散歩をしておりました。「そうだ、古本屋へ行くベ」、当時まだあった根津の坂下の古本屋さん(峰尾文泉堂←編集部)にまず行って、そこからまっすぐ赤字坂下へ向かい、不忍通り方向へ歩きつつ、「そういや、この辺にあった石川書店(だったと思います、芋甚の並びでした)には小中学校の頃よく来たな」などと昔日を偲んでおりました。
不忍通りを千駄木方向に折れ、やはりもう店を閉めていたもう一軒の石川書店(確か上述の石川書店とは親子の関係であったような記憶が・・・。違っていたらご免なさい)前を通り過ぎ、またもや今はなき、マンション1階にあった名前失念の古本屋(温知堂←編集部)へと到着。文庫を一冊買って、須藤公園でも行くかと思いつつも、なんとなく「この先にイイ物があるかも」との根拠ゼロの思いが突如去来、足を西日暮里方面へと向けました。
するとどうでしょう。目の前にデカデカと「古本」の文字が。横を見ると、スーパーかコンビニ並みの広さと見える古書店が。これが古書ほうろうさんとの出会いでした。
さあ、新しく古本屋を見つけて嬉しい反面、その店のデカさに一抹の不安を覚えました。このテの規模の新しい古本屋は、大概マンガ・オンリーだったりするわけなんですな。別にマンガ嫌いな訳ではないんですが、今どきの漫画ばっか並べたそのテの店では、あんまりイイ物と出っくわしたこともないし、特殊過ぎるブツとも無縁に見えるし。
しかし、中に入るとそんな心配は無用でした。ジャンルの整理もきっちり、そしてオールマイティ。しかも私にとっては重要な映画、音楽物の割りとヒネくれた品揃え。棚上の豪華本や辞典類の並ぶ一角に、ナイスなブツをまず確認。タイムライフ社から出ていた西部史関連の箱入り本でした。もう持っている本なんですが、このテの本がある所には、今後も西部の風が吹いてくる可能性が非常に高いと判断しました。
一通り店内を見渡して、ハヤカワのポケミス(ミステリ物の定番シリーズ)が少ないことにやや不安を感じつつ、映画コーナーに腰を据えた私に驚天動地のブツの嵐が!!
以下次週。
*第37回は坂口亜紀(つぐとし)氏の執筆です。
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