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谷根千35年の節目に「峯山冨美賞2019」をいただきました。

この度、2020年2月1日の第42回全国町並みゼミ川越大会において、谷根千工房(森まゆみ、仰木ひろみ、山崎範子)は第4回峯山冨美賞をいただきました。今まで支えてくださった方々に心よりお礼申し上げます。

峯山冨美賞2019 選定理由

峯山冨美さんは2010年12月28日に96年の人生を閉じられた方です。一人の主婦だった峯山さんは60代で「小樽運河を守る会会長」として歴史的環境の保存運動に取り組み、当時は厚い行政の壁にはばまれ、保存運動は困難をきわめていましたが、故・木原啓吉先生と出会ったことから、第2回全国町並みゼミ近江八幡大会で小樽運河保存を全国にアピール、1980年の第3回全国町並みゼミ小樽・函館大会を開催するなど粘り強い運動を続け、その結果、小樽運河は全面埋立は免れ、現在では小樽を代表する景観に生まれ変わることができました。今から33年前のことです。その原動力となったのは、なんといっても人を愛してやまなかった峯山さんの包容力と人徳の高さであり、その峯山さんのお名前を後世に残したい、と、ある篤志家から全国町並み保存連盟にお申し出を受け、2016年に峯山冨美賞を創設しました。今回は4回目の贈呈となります。地域の文化と歴史的集落・町並みなどの保存・再生・活用運動を通じて地域の活性化に寄与することに貢献した方に賞を贈ります。
今回は、10月に片寄俊秀さんを委員長とする選考委員会で審査の結果、森まゆみさん、山崎範子さん、仰木ひろみさんの3人による谷根千工房が推薦されました。
谷根千工房は、東京の谷中根津千駄木を中心に、地域雑誌の嚆矢である『谷根千』を1984年10月に創刊し、市井に住まう人々の声を丹念に記録しました。そこから拾い上げた課題解決のために谷根千地域だけでなく、東京駅を中心とする丸の内の景観保存運動などにも加わっています。雑誌『谷根千』は2009年に94号で終刊しましたが、現在でも根強いファンがバックナンバーを求め、貴重な地域の資料となっています。 
峯山冨美さんとは、3人が運動を始めた頃、新橋にあった全国町並み保存連盟事務所で会ってから交流を深め、峯山さんから小樽に呼んでいただき、歴史学者の夫君が彰義隊の幹部の末裔だと知り、森まゆみさんは著書『彰義隊遺聞』のあとがきに記したとのことです。谷千工房は、第9回全国町並みゼミ会津大会に初参加、お子さん連れで全国町並みゼミに参加する姿は話題となりました。第21回東京大会では分科会を運営し、第33回盛岡大会では森まゆみさんが基調講演を行っています。
『谷根千』終刊後、10年以上たちますが、3人の活動は続いています。森まゆみさんは著作活動に加え、文化審議会など各種委員会の委員として発言をし、山崎範子さんは地域の歴史的建造物保存運動からノコギリ屋根とリボン資料の発見研究に取り組みながら、雑誌『地域人』の編集者として活躍、今年は特集「生きている町並み」で多くの会員が取材を受けたのは記憶に新しいところです。仰木ひろみさんはNPOたてもの応援団発足のきっかけとなった千駄木の旧安田楠雄邸庭園のマネージャーとして、100人を超えるボランティアとともに公開・運営活動に従事しています。
地域にねざしたたゆみない歴史環境の保存再生活用運動を進めてきた谷根千工房の森まゆみさん、山崎範子さん、仰木ひろみさんの3人に峯山冨美賞2019を贈ります。

節目でもあり、ここで記録保存のために谷根千工房がこれまでのやってきたことを振り返ってみます。

谷根千工房がやってきたこと、関わってきたこと

*季刊雑誌の発行 1984年~2009年 1~94号
その他印刷物の発行(絵葉書、地図、よみがえれ奏楽堂、谷中五重の塔事典、上野不忍池事典、赤レンガの東京駅、もてなしの町すがも、台東法律事務所設立30年記念誌、谷中墓地に眠る人々1〜3、一葉すごろく・一葉歌集、円朝は我らの同時代人、私の浅草、家族の千駄木——森晃子聞書など)
Yanesen Magazine英語版谷根千1~3 ジョルダンサンドさん協力(谷根千ワシントン支局長)
フリーペーパー(しのばず通信、谷中墓地自然通信、屋敷森通信、千駄木林の中から、やねせん通信ほか)

*主催し、あるいは関わったイベントの数々
谷中菊まつり、谷中圓朝まつり
谷根千生活学校 平日昼間の女性たちの集い
谷根千生活を記録する会 月一度の読者の集い 藤原恵洋さん協力
根津郷土史研究会への参加、根津寄席の手伝い
谷根千同窓会 古写真展、根津コンドーギャラリー
谷根千ウィーク
酸性雨と大気汚染NO2の調査
不忍池に絵展、龍神パレード、国際写真展など
井戸や稲荷の調査、加藤勝ひろさんと協働
いいとこ探し
路地から環境を考える会 
江戸のある町上野谷根千研究会と協働(トヨタ財団助成)
上野そのまんま博物館(リーバイス財団助成)
一箱古本市への参加
ホームムービーの日への参加
縮小社会研究会との協働
歌の会O
3・4平和地蔵などの戦争遺跡継承
台東区9条の会と協働
谷中芸工展への参加と協働S
D坂シネマ開催
保育園や学童保育と協働した野外映画上映、千駄木ふれあいの杜での野外映画上映 Y
けんこう「蔵」部 
谷根千・記憶の蔵の主宰、貸し出し、運営、修復 
東京大学と協力しての谷根千の資料デジタルアーカイブ化 M
石見銀山群言堂の協力で布供養 M
根津アイソメでのまちづくりお勉強バー さすらいのママプロジェクト M

*関わった保存・活用の数々——住民の皆さんと
吉田屋酒店 →台東区下町風俗資料館付設展示場に、生活文化財指定
奏楽堂・およびパイプオルガンの保存・復原→重要文化財に。
東京駅→重要文化財に、JR東日本が復元
不忍池地下駐車場反対→、蓮池下2000台の駐車場は上野広小路の地下700台に
上野駅超高層化反対→バブル崩壊で計画そのものがなくなる。
サトウハチロー邸→区の対応のまずさから北上市に移転
旧安田楠雄邸庭園→公益法人日本ナショナルトラストへの寄贈が叶い保存・公開
旧安田楠雄邸庭園の運営・公開(週2回)事業 O
たてもの応援団(文京の歴史的建造物を活用する会)⇒各地にたてもの応援団発生
たいとう歴史都市研究会への参加
谷中墓地の木の保全、切られた木によるベンチ設置 Y
千駄木森を考える会(千駄木ふれあいの杜)管理と公開 
菊坂の樋口一葉が通った伊勢屋質店を残す M
日暮里富士見坂の眺望をめぐる「見えないともっと見たい 日暮里富士見坂の眺望再生プロジェクト」の活動
山の湯の保存プロジェクト
銭風連(谷根千地域からこれ以上銭湯を失いたくない風呂好き連中) Y
よみせ通りの鋸屋根部材保存と明治期のリボン資料の発掘調査「谷中のこやね会」
新国立競技場計画見直しと霞ヶ丘都営住宅廃止の反対 M
谷中の都市計画道路廃止による再開発推進反対署名 M
地域では朝倉彫塑館庭園は国の名勝に、建物は登録文化財に。
そのほか、観音寺土塀、根津教会、はん亭などは国の有形文化財に登録

*子育ての協同化、福祉、環境、住宅
不登校児童の預かり,ハンディを持つ子供の学童保育延長、送迎ボランティア
住宅運動, バブル期の地上げ反対の活動
谷中コミュニティセンター建て替え再考の活動 防災、避難問題
3・11以降の東北の被災地支援活動、大塚モスクや光源寺との協働、
タイの奥地、モンゴルなどとの交流、北海道大学インドネシアのカリマンタンの森林保全管理などへの協力M

*派遣
台湾 日台協会招請
インド・ブータン 国際交流基金招請 M
ミャンマー・ヤンゴンとバガン 京都大学・文化庁の依頼 M
ジョージタウン大学で貧困住宅地とオーラルヒストリーのシンポ M
ヨルダンアンマンで講演、地元住民とワークショップ フランス協会 M
エチオピア、アジスアベバのみじかな文化財のための講演 ユネスコ招聘 M
また行政、財団などの委員、講演多数。

*活動への賞与
NTTタウン誌大賞 1回、4回、特別表彰
路傍の石地域文化賞
サントリー地域文化賞
建築学会文化賞
下町人間大賞
峯山冨美賞 など

ご覧いただいたように、活動は多岐にわたりました。3人はそれぞれ手分けして関わってきました。 初期からスタッフとなった藤原馨さん、峰吉智子さん、大学卒業後、7年に渡り勤めてくれた川原理子さん、事務所を手伝ってくれた多児貞子さんはじめ、多くの方々の応援に感謝します。 毎年、5月に愛知県足助にたけのこ掘りに行くのも、読者の縁で、子供達たちの楽しみでした。3人で10人の子供(といっても年長者はすでに38歳)はみんな好きなことを元気にやっています。

現在谷中だけで年間200万人が来るという観光化による地域の荒れも目立ちます。大箱のホテルもふたつできました。政府のインバウンド(観光立国・海外客誘致)政策によるオーバーツーリズム状態になっています。一方、地域の銭湯が15から3に、豆腐屋が22から3に、酒屋が60から20に(あと20くらいはコンビニに鞍替え)という生活の質が守れない問題、地価の上昇、ブランド化とマンション林立によるジェントリフィケーション(旧住民の追い出し、お金がないと住めなくなる)も大きな問題です。自由競争に任せるのでなく、ベルリンのように地価や家賃の凍結が必要でしょう。

峯山冨美さん(1914〜2010)は小樽の運河を残した伝説の人物ですが、60歳から市民運動を始められました。私たちは20代から始めたので、35年やってなお、まだ時間はあります。そして谷根千の場合、たくさんの若いまちづくりプレーヤーが陸続と育っているのが嬉しいです。これからは彼らの邪魔をせず、彼らを応援するフォロアーとなりたいと思っています。

峯山冨美さんについて

1914年、北海道真狩村に生まれる。1924年小樽に移りすむ。「私が女学生のころ、小林多喜二は北海道拓殖銀行に勤めていたのよ」、小樽高等女学校を卒業、三菱商事に入社、峯山巌氏と結婚して伊達市に引っ越す。「峯山の祖父は小林覚五郎と言って、彰義隊士で、箱館戦争の後、こっちへ来たのだと思います」小林覚五郎は2月の雑司ヶ谷鬼子母神での会合に参加していることから、一橋藩の家臣と思われる。彰義隊の幹部である。夫の峯山巌さんは伊達高等学校教員の傍北小金遺跡の発掘に携わった考古学者。「子供のない夫婦がこの世に残せるものは北小金遺跡、そして小樽運河、それでいいっしょ」1955年に小樽に戻り、冨美さんは北手宮小学校に勤務。1973年、60代にさしかかろうという時、小樽運河が道道建設のため、全部埋め立てられるのに反対、「小樽運河を守る会」を立ち上げ、1978年より会長。「なんで残すのか。それはやっぱり運河あっての小樽だからよ。あの運河に沿って何千という女たちが小豆をよりによって、小樽の小豆はゴミがない、とロンドンの相場を左右するほどだった。コンドル先生の最初の四人の弟子のうち、辰野金吾、曽禰達蔵、佐立七次郎の三人までが小樽に建築をのこしている。ウォール街と呼ばれる商業街が小樽にはありました。運河は小樽の誇りだったのよ」その時91歳の峯山さんは一人暮らしだった。「人に迷惑をかけないように生きているの」と言われた。「私は行政に楯突く女、でも会社や地域のしがらみのない女だから表立って言えることもあるのよ」深く刻まれる言葉である。。

2020年2月18日   谷根千工房(森まゆみ 仰木ひろみ 山﨑範子)

谷根千工房 http://www.yanesen.net   E-mail: info@yanesen.com
〒113-0022 東京都文京区千駄木5-17-3 谷根千<記憶の蔵>内 
mobile 080-6670-0142(やまさき)
★常駐していません。

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