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手は語る−日暮里の町工場を歩く

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町工場こぼれ話〈1〉
2005年3月17日(木)  阿部清司 あべ・きよし
 日暮里某所の金属加工業者Aさんの話。
 他の商売のことはよく判らないけど、もう製造業はダメなんじゃないかなァ。よっぽど特殊なものをやってるか、NC機械がたくさんあって、単価の低いものを大量に生産できるか。どっちかじゃないとね。
 実はウチも取引先がこの数カ月で辞めるって言うから、どうしようかなァって考えてるとこなんですよ(訊けば、その取引先がAさんの仕事の九割以上を占めるという)。
その会社が最後だって言うんで、注文が殺到していて、それでウチも忙しくなってるんだけど。まあ、忙しいったってねェ。
 ウチは身内だからやっていけるんですよ。これで人を使ってたら、最低でも月に20万円は払わなきゃならないでしょ。人を使うくらいなら、今すぐ閉めちゃった方がいいくらいなんだからさ。恥ずかしいはなし、私らの取り分がそこ(月20万)まで届かないんですよ。
 昔は悪い時があっても好い時があって、帳尻が合ったけど、今はもうまるきりですよ。少し好くても、その後それまで以上に落ち込んじゃう。どんどん悪くなるばかりですからね。
 1000万するNCを入れて、数カ月は仕事があったとしても、その後が暇じゃあ借金が残るだけですよ。
 今、国会で個人消費を云々してますけど、まったく別世界の話だよね。   (つづく) 
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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阿部清司 あべ・きよし 建具見習い、時々ルポライター
1974年生まれ。2000年9月に神奈川から谷中へ住まいを移す。いくつかの業界紙・誌の記者職として生計を立て、04年5月からフリーとなったが同年末にあえなく撃沈。05年1月、神奈川に帰り、家業の建具屋の職人に見習い小僧として弟子入り。「谷根千」67号74号78号に「日暮里駄菓子問屋街」の取材記事を寄稿。菓子業界はじめ、さまざまな工場に出かけて職人の話を聞く。
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