
3時休憩は30分。晴さんのおかみさん、絹代さんが緑茶と黒ごまの串団子を運んできた。
晴さん61歳、清ちゃん67歳、佐々木さん66歳。木工3人の手に触れさせてもらうと、ともに柔らかい。
「昔はうんと固かったんだけどなぁ。柔らかくなっちゃったんだよ」
と話す晴さんの手は、先程までの作業で付着した木工ボンドを洗い流した直後だったので、少し濡れていて、ヒンヤリとしていた。
工場(こうば)の中を見回すと「昇降盤」や「フルオートパネルソー」など、木工機械が目につく。手の固さに変化を及ぼしているのは、やはり仕事の機械化だろうか。
「切ってから2、3年は、冬になると脹れて、使いもんにならねぇんだ」
清ちゃんの左手中指は、第一間接から先が、ない。タカノに来る以前の、ある工場で働いていた四十数年前に、誤まって木工機械で切断したという。そこは、柔らかいを通り越して、少しぶよぶよしていた。
佐々木さん「指切っちゃうとよぉ、大体10年は痛むっていうんだよ。なぁ」
清ちゃん「うん。そうだな」
佐々木「だから社長(晴さんのこと)がいつも、ケガすんなよ、ケガすんなよって口を酸っぱくしてるよ」
清「この人(佐々木さん)のは羨ましいんだよ。細かいものだって、何だって掴めんだから・・・・・・」
佐々木「えへへ」