10月30日(木曜日)
娘恐怖症でお昼ごろ家出、11時半の新幹線で米原へ。東海道線をすこし戻って醒ケ井へ。落ち着いて美しい宿場町だ。ここのひとたちがいかに美しく住みなしているか「かくてもあられけるよ」とつぶやく。ゴミひとつ落ちてない清流。夏は梅花藻が咲き観光客がおおいとか。今でもすこし咲いていた。清流の中に花を生けているうちがある。茅葺きらしき古い家のスーパーがある。川の水で丁寧に里芋をこそげている夫人がいる。その包丁の使い方がまた技術。みんな笑顔で挨拶して下さる。ハリヨという珍しい魚もいるらしい。おしむらくは裏の崖を名神高速道路が通って、その車の音がすること。こんなきれいな町並みに高速を通そうなんて考えたやつが憎らしい。ゆうがた長浜へ。私たちよりあとに創刊されるも、すでに100号を迎えた「みーな」の編集部を訪ねる。3000部、480円。カラーの表紙でもあるし、経営は安泰かと思ったが苦しいとのことだった。お互い地域雑誌の苦労をかたりあう。長浜の町は地域おこしの成功例のようにいわれ、確かに地方都市にしてはシャッターの下りた店が少ない。しかし株式会社黒壁というところがイニシアチブをとって、改装してい��るため、全体に調和しているといえばいえるがそのぶん、画一的で、いかにも観光客向けの店がおおい。また人が来ることがわかれば地主家主も欲が出るらしく、古民家で50万などという法外な家賃を要求する人もあると聞いた。東京の谷根千でもお金のない若者に5万くらいで長屋を貸す奇特な人もいるというのに。金儲けをめざさない町、がいいな。夜は彦根のオールドでユタカと飲む。「あんまり来るなよ」といわれそう。居心地のいいお店である。
森まゆみ
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