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くまのかたこと - 旅の宿編

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宮崎観光ホテル(2002)

連載を書いている宮崎日日新聞社から講演を頼まれたので、その会場である宮崎観光ホテルに泊めてもらう。宮崎へ来るのは初めてだ。
宮崎市で一番というホテルで、大淀川のほとり、川辺にはワシントニアパームというヤシが高くそびえている。空港についてから本当にヤシだらけ。ヤシ→南国→新婚旅行という記号が40年来、生きているらしい。現天皇の妹で人気のあった貴子さんが、佐渡原の旧藩主島津家へ嫁入りした際、里帰り新婚旅行をしてから、宮崎は新婚旅行のメッカになったそうな。最近はハワイやグアムやヨーロッパに行ってしまい若いカップルはとんと来ない。
それでも観光ホテルは接客はよし、部屋はよし、眺めはよし。その上なんと露天風呂の源泉つき(前に那覇のロワジールホテルが源泉付きというので決めたのに、行ってみると宿泊客からさえ何千円も入湯料をとる。しかもホテル内は森英恵の気味悪い蝶模様にヤマサキとゲッ!とした)。シュロがはえ、川岸のパームが見えるとなんだかバリ島に来た気分。
夕暮れも夜景も明け方もよかった。向こうの石橋を赤い二両の電車がゴトゴト通り、はるか向こうの空を飛行機がゆく。
いくつもの石の橋。この風景を愛して川端康成が「たまゆら」を書いた。それで温泉は「たまゆらの湯」という。ただし、宮崎のホテルは少し明るすぎる。

森まゆみ
2004年6月25日(金曜日)公開

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