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くまのかたこと - 旅の宿編

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法師温泉長寿館(1998)

群馬の後閑の近くに猿ヶ京、四万、谷川といい湯が多いが、その中でも法師は秘境だと父母に聞いた。私が子どもだった頃、兄弟三人で留守番できるようになって、四十代半ばの両親が二人で旅し、初めて行った宿だ。いつか行きたいと思ううち、上原謙と高峰三枝子が国鉄フルムーン旅行キャンペーンのポスターとなり、高峰さんのたわわな胸もみごとだったが、鹿鳴館風ともいう窓の、天井の高い風呂も憧れで、すっかり人気の宿になった。

5年前、執筆中の伝記の主人公が大正の頃ここに泊まったということで行った。タクシーを降りるとぷうんと木の匂い。満室だというのに部屋の配置や棟の間隔がいいのか、うるさくはない。宴会の賑わいが遠く伝わってくるのが胸をキュンとさせる。石をひいた浴室も薄暗くてちっとも混浴が気にならない。仲居さんもプライドがあって親切、と評判通りいい宿だった。

森まゆみ
2003年9月9日(火曜日)公開

関連リンク http://www.matatabi.ne.jp/houshi/

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