北海道 水無浜海浜温泉(1982)
私が江差を旅したのは季節はずれで、お天気はずっとピーカン。とにかく青い空と、それよりもっと蒼い海が体中に焼き付いてしまいそうだった。
車だから、気の向いたところで止まり、町営温泉に入ったり、カモメを眺めたり、ニシンの番屋に入ったり、ウニ丼をかきこんだりした。
だからどこへ泊まったかもよく覚えていないのだけど、このときの温泉ですてきだったのは、水無浜海浜温泉という波打ち際の温泉だ。湯は岩陰に勝手に湧き、人は勝手に入ればよいのらしかた。岩の上に服を脱ぎ、まだ一歳だった娘を抱いて、波の砕け散るしぶきを浴び、陽の元に真っ裸であった。さんざん遊んで上がって服を着たところへ、あのう、もうよろしいでしょうか、と若者二人。どうやら、いつ出るかとどこかで見ていたらしいと気づき、私は赤くなった。
森まゆみ
2003年8月15日(金曜日)公開
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