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くまのかたこと

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11月1日(土曜日)

旧知の陶芸家石田陶春さんの家に泊めてもらい、その林の中の贅沢ではないが豊かな暮らしをお裾分けいただいて、栗のお菓子で抹茶を飲んだりのんびりしていて、午後の関西大学での催しにギリギリセーフであった。地方の時代映像祭の開幕の宣言をし、そのあと、この映像祭の長らくプロデューサーだった村木良彦さんをしのぶシンポジウムに出席。村木さんとはじめて会ったのは1995年、文京ケーブルネットワークを立ち上げる際、小型カメラで町の現場にはいるには、という新人向け授業を頼まれた。その後、MXテレビを彼が立ち上げる際は番組審議会委員を頼まれた。それから東京国際大学で地方の時代映像祭が行われる際は審査員を、また翌年からはこの大学で3年同僚であった。何時もはにかみながら、ゆっくり言葉を選んで話した。映像祭の応募作はすべて見たが、審査には自分の意見をまったく言わずににこにこしていらした。おそらく村木さんはいまの大手マスコミやその制作状況に限界を感じ、地方局などもう少し小さなメディア、若い人たちに期待していたのだと思う。ことしもトヨタの工場における過労死という、大マスコミではつくれないドキュメンタリーが優秀賞をとった。
去年徳山ダムを扱った「約束」でグランプリの東海放送の阿武野勝彦さんは「裁判長のお弁当」で日本放送文化大賞、光市母子殺人事件を弁護人の立場から描いた「光と影」で民放連報道部門のグランプリ、そして名張毒ぶどう酒殺人事件の再審を描いた「黒と白」を地方の時代映像祭に出してくれて、これも優秀賞をとった。いま一番輝いている放送人ではなかろうか。六日には阿佐ヶ谷のドキュメンタリー酒場で「光と影」の上映が行われる。阿武野さんはもちろん吉岡忍、森達也さんなども駆けつける予定。

森まゆみ

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