修善寺 新井旅館(2003)
沼津の漁港に行ったら「双葉すし」に寄るとよい。アジ、カマス、ナマトリガイ、シャコ、生ゲソ、活エビ、卵、アオリイカなどなんとも新鮮なすしをお腹いっぱい食べて4400円だった。
そこから三島へ出ると修善寺行の電車は15分に一本ある。終点からバスで10分。修善寺温泉は夏目漱石のいわゆる「修善寺の大患」で泊まったキクヤ旅館もあるが、建物の数棟が国の登録文化財という新井旅館は驚くべき宿だった。川に面した部屋、池に面した部屋など、明治13年を最古に大正、戦後の建物がいまも客室として用いられている。手入れもよく、かび臭くもなく、木口がすばらしい。
私の泊まった桐の棟は大正5年の数寄屋造り、ふと見上げれば世外とある偏額。井上馨である。「千邪不如一直」は彼にふさわしからぬが、良寛の書もある。泉鏡花、横山大観、島崎藤村、芥川、泊まった文人数知れず・・・
一品ずつ出される懐石は珍しい食材を用い満足。宿の人も親切でいい塩梅のサービスだ。野天風呂と安田靭彦設計の天平風呂、琵琶湖風呂もたいしたもの。それで2万2千円から。ちょっと高いが文化財保存にも役立つので、ぜひ行ってみましょう。
森まゆみ
2003年8月1日(金曜日)公開
関連リンク http://www2u.biglobe.ne.jp/~izuarai/
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