!新谷根千ねっとはコチラ!

くまのかたこと - 旅の宿編

<-前へ  次へ->   一覧に戻る
 
青森 青荷温泉旅館(あおにおんせんりょかん) (1984)

ここも北海道に帰る途中に泊した宿で忘れがたい。黒石のインターチェンジから国道に入り、それも出てしまってずいぶん行くと、乳頭温泉黒湯に負けず劣らずのひなびた茅葺きの宿が目についた。ランプもそのままなところを見ると、宿の持ち主は、「古い手持ちのもの」で勝負した方が客が来るということがわかっているに違いない。「宝の持ち腐れ」とか宝をこわして安手のピカピカ旅館を建てる人が多い中、見識である。
従業員は津軽訛りが強くて、言うことがあまりわからないが、「はろばろと来つるものかな」の感が湧く。兄弟かなという三人が、冗談ばかり言うので客は大喜び。夜は談話室みたいな所に客が集まり、宿の兄さんが次々、またたび酒だの何だの薬草酒を出してくれる。これオゴリかなと思ってぐいぐい飲んだら、翌朝しっかり請求書についていた。そんなのはもちろん許す。お湯も最高だから。

森まゆみ
2003年7月24日(木曜日)公開

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このworkは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
ページトップへ