企業破綻と金融破綻 − 負の連鎖とリスク増幅のメカニズム
小川 功
九州大学出版会 本体7,000円 A5判 574P
2002.2.28発行 ISBN 4-87378-719-X
◆ある日、滋賀大学経済学部教授の小川功氏が来房された。
「この本に『谷根千』を引用させてもらいました。出版後のご挨拶で申し訳ないが、1冊寄贈したい」という。
いただいたのは、重くて難しそうな、ぶあつい、立派な本だった。7千円もする。しかも引用はたったの6行。
でも、目次を見て、ありがたく頂戴することにした。
この本は、今おこっている企業破綻、金融恐慌を解析する道具として、歴史を振り返り、過去の記録を徹底的に分析したものだ。いや、そうらしい。
断定できないのは、なにしろ、膨大な記録が詰め込まれているので、とても読破できそうにないからなのだ。
ここには、明治・大正期までに一定規模に成長した企業家や資産家の中から、大正期・昭和初期までに衰退、破綻した事例を抽出している。
数ページを摘み読みしていても、すぐに2〜3時間が経つ。
淡々と書いてあるが、ハマって読めばとてもコワイ。
本は大きく2部構成となり、
第1部「企業破綻」では、明治初年の鉄道事業の勃興期に、一気に投機し、拡張していった鉄道企業が、明治30年代に入って極度の資金難の窮地に陥った企業を取り上げ、
第2部「金融破綻」では、大正中期の大戦景気にのって拡大した反動で資金難となり、破綻してゆく金融機関を取り上げている。
さて、興味深い目次の一部を羅列してみる。
・鉄道における資金調達の困難性
・免許獲得競争と大阪財界分裂
・太田鉄道と十五銀行
・困窮企業の資金調達パターン
・金融恐慌の導火線・東京渡辺銀行
・東京渡辺銀行の貸付先
・東京渡辺銀行の大口預金者
・東京乗合の「根津財閥」への併呑
・神谷伝兵衛と三河鉄道
・不動産売却とあかぢケ原事件
・安田銀行による自己競落会社・昭栄製紙設立
と、『谷根千』の地誌として気になる単語が続く。
渡辺銀行の章を読んでいると、資料の宝に埋もれそうになる。
さっそく、
『谷根千』74号の目次上に掲載したよみせ通りの鋸屋根を調べる中で、この本にお世話になった。
詳しくは本誌をお読み下さい。では。
このページのコメントを全部読む