友人たちが泊まって感激して帰って来たので、その次の週に予約をしたがいっぱいだった。それで食事だけでもとおねがいした。
庭がすごい。これすべて石の上。その庭を生かして、いろんなタイプの部屋があり、それが全部はなれのようにみえる。
ご主人が上野さんといって、とてもチャーミングなかた、谷根千をご存知なのは、お嬢さんが東京芸大在学中だかららしい。
そこここに少年の隠れ家みたいな居心地のよいスペースをつくっている。ここで本を読みたい、ここでシャンパンを飲んでおしゃべりしたいここで昼寝できたら、と夢想してしまうような場所。
そのうえ、料理は素材、調理法、盛りつけ、すべて申し分ない。海からはすこし離れているが、ふりかえってみえる山がすばらしい。庭が小さく見えるほどに。
ご主人は、子供たちはそれぞれの道を見つけここはわたしの遊びです、という。そのすがすがしさ、肩を張らないたのしさがみちあふれている。
じつは穴子の弁当で有名な上野やさんが始めた旅館なのである。

森まゆみ
2008年1月8日(火曜日)公開