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谷根千関連出版

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復刻版 日暮しの岡 − 東に筑波、西に富士
2008年5月29日(木曜日)発行

確連房文庫(1)
著者 平塚春造 聞き手 森まゆみ
1200円(税込み1260円)
復刻版
残部僅少

郷土の宝 − 「日暮しの岡」によせて
吉村昭

諏訪神社の鳥居の傍らにある平塚春造さんのお宅を訪れたのは、昭和五十八年の秋であった。
当時、私は、「オール読物」に「東京の下町」という随筆を連載中で、生まれ育った日暮里の町をはじめ谷中、根岸、千駄木、上野などの思い出を手繰りながら筆を進めていた。その執筆中に平塚さんの名を耳にした。郷土の町のことを熟知している第一人者で、平塚さんにぜひ会うようにすすめられたのである。
初対面であったが、奥の座敷に通された私は、ほのぼのとしたお人柄の平塚さんにすぐうちとけ、お話をうかがうのがまことに楽しかった。と同時に、底知れぬ豊かな知識をおもちになっておられることに驚嘆した。
此の度、平塚さんが追憶記をお出しになり、それを読んだ私は、あらためて記憶力の確かさと簡にして妙なる語り口に敬意をいだいた。
平塚さんが描かれている地は、歴史的に意義深い性格をもち、江戸の文化と強く結びついている。それが明治、大正、昭和と時代は移ってもそのまま受けつがれ、それ故に、この追憶記にも著名な文人、美術家などが、こんな人までいたのかと驚くほどつぎつぎに登場してくる。
平塚さんは、わが郷土の貴重な存在であり、平塚さんによって、郷土の歴史的な姿が鮮やかによみがえっている。
私たちにとってこの追憶記はまさに得がたい宝で、後の世に光り輝く遺産となることは確実である。(作家 日暮里生まれ)

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